秋田新幹線「こまち」

 東北は遠いのでどうしても飛行機を利用することになるが、今回はあるツアーに参加したので、大阪から秋田までJRで行った。東京で乗り換えて秋田新幹線「こまち」に初めて乗った。この列車は、東京からは東北新幹線の「はやぶさ」に連結されており、盛岡で切り離されて、秋田まで走っている。

 この「こまち」で面白いのは、東京から盛岡までは、他の新幹線同様の線路を走るが、盛岡から秋田までは高架の新幹線ではなく、地上に降りて在来線の田沢湖線奥羽本線の線路を走っていることである。

 当然、東京から盛岡までは速いが、その後盛岡から秋田まではゆっくり走ることになる。東京ー盛岡館が2時間13分なのに対して、盛岡と秋田の間は距離が短いのに1時間54分と略同じ位の時間がかかる。しかし、遅いことは悪いことばかりではない。新幹線は速過ぎるので、外の景色を楽しむゆとりが少ないが、盛岡ー秋田間はゆっくり走ってくれるので、車窓からの東北の田舎の風景を楽しませてくれる。

 同じ列車に乗ったまま、効率良く長距離を短時間で運んでくれる前半と、ゆっくりと途中の景色を楽しませてくれる後半部分が続いているのが興味深い。今の世の中を皮肉っているようにも感じさせられる。仕事の上では速くて能率が良ければ良いだけ優れているが、旅行を楽しむなら、能率よりも旅行の過程をいかに楽しめるかということの方が大事になる。

 人類にとって、効率よく働いて複雑な機械文明をどこまでも推し進めるべく寸暇を惜しんで働くのと、人生をゆっくりと楽しんで過ごすのとどちらが良いであろうか。衣食住の生活が保障されていたら、当然多くの人が後者を選ぶであろう。

 現在のように全てが効率よくあまり人力をかけないで出来るようになって来ると、当然その分、人はそれだけ働かなくても世の中は廻るはずである。人類はもう少し利口になって、経済の回転の仕方を変え、成長よりも分配の仕方を変えて、皆がゆっくり暮らせるようにすべきではなかろうか。そんな夢のようなことを思ったりしながら、盛岡から秋田に向かう「こまち」に乗って外を眺めていた。