核戦争よりもっと恐ろしい戦争

 第二次世界大戦を見てもわかるように現代に戦争は総力戦である。総力戦であるからには持てる全ての力が発揮される。最先端の技術が用いられる。

 それまでの常識は通用しない。第二次世界大戦の前には大艦巨砲の時代であったが、戦争となると最早大艦巨砲は通用せず、航空機の時代となっていた。戦争は前線における戦闘だけでなく、国家と国家の総力の戦争となり、大規模で、前線も銃後も変わりなくなり、大規模な都市に対する爆撃が行われ、国中を焼き尽くさんばかりとなり、戦争末期には原始爆弾まで使われ、この延長線上では、人類の滅亡さえ真剣に考えなければならなくなったことは周知の通りである。

 しかし科学の発展が止まることがない以上、戦争になれば、更に最先端の科学が利用されることになる。核戦争に対する反対の声が上がっても、核開発が止まったわけではないし、劣化ウランを使った弾薬の使用も行われている。やがて核弾頭もより強力なものとなるだろうし、宇宙軌道からの発射も考えられるであろう。

 更に今後の問題としては、当然AIの軍事利用もあろう。米軍などは既に無人の飛行機(ドローン)による攻撃を行っているが、今後の戦争ではAIがフルに活用されるであろう。無人のAIの判断によって攻撃するロボットの大規模戦闘が行われるであろうし、宇宙空間の利用による攻撃にも用いられるであろう。そこへの核爆弾の利用も加わるであろう。

 先の大戦でも条約で禁止されていた毒ガスも実際の戦闘では使用されたし、生物兵器の進歩もあろうし、それらの組み合わせも考えられる。総力戦であれば条約は無視され、ありとあらゆる手段が利用されることになるのは必然であろう。

 何れにしても、現在驚くほどの金額を消費して準備されているような兵器類は最早ほとんど役に立たず、もっと違った全く新しい戦略や戦術による思いも寄らない大規模な戦闘が起こる可能性も高い。その結果は本当に人類の滅亡に繋がりかねないし、地球そのもののの破壊さえ起こりかねないであろう。

 ただ核兵器のようなあまりにも大規模な大量破壊兵器の応酬は自分をも破滅させることが足枷となって、それより現在中東などで繰り広げられているゲリラ的な地域的な戦闘が世界的に広がるような、あらゆる権謀術策を使った、違った形の世界戦争の可能性も考えられる。こちらの方が陰惨で残虐、悲惨な結果を招くかも知れない。こういう戦略、戦術、諜報にあった武器の開発も進むであろう。

 最早、どちらが勝つかより、人類がどこまで耐えられるかが問題となり、人類が本当に最後の時を迎える可能性も十分あるであろう。最後の救いは人類の叡智しかない。