8月15日の日経新聞によれば、安倍晋三首相は2012年12月に再登板してから「地球儀を俯瞰(ふかん)する戦略的な外交」を掲げ、5年8カ月間の外国出張の回数は平均で「月1回」ペースを維持し、訪問国数はすでに歴代最多の68ヶ国になるそうである。
これだけ多くの国にいかねばならない必然性があったのかどうか疑問にも思うが、首相が多くの国と首脳外交をすることは悪いことではない。ただ、これだけ多くの国を訪れているにも関わらず、いまだに最も近くて大切な中国と韓国への単独訪問が実現していないことは問題で、図らずも、安倍外交の本質を表しているようである。北朝鮮の拉致問題などは何の進展も見られていない。
戦後の日本外交は米国との同盟関係とともに、中国、韓国との関係を軸としてきたが、それにも関わらず、安倍首相の中韓両国への訪問は、国際会議や五輪にあわせた訪問を除けば、単独訪問は未だに実現しておらず、最後まで残されているのである。
対米従属は安倍内閣になってから益々深まり、トランプ大統領の元へは大統領就任以前に真っ先に飛んで行き、その後もトランプ大統領に寄り添い、その言動に常に追随しているが、中国や韓国に対しては尖閣問題や慰安婦問題なども絡んで、非友好的、時には敵対的立場をさえ突きつけて、未だに良好な友好関係を確立出来ていない。国の外交にとって最も大事な近隣諸国との信頼関係が一番後回しになってしまっている。
首脳の訪問国家数が多いことは首脳の嗜好にもよるが、未開発国家が広く自国を知って貰いたい時や、国連での投票数獲得などのあからさまな目的を抱えている時などであろう。そうでなければ、退潮する国が出来るだけ自国への関心を広く繋ぎ留めて置きたい時などということになるのであろうか。
影響力の強い大国では、その時その時でポイントとなる国さえ押さえておけば良いし、向こうからやってくることが多いので、訪問国が多ければ多いほど良いというものではない、
日本にとっては、宗主国であるアメリカとの関係はもちろん大事であるが、種々の利害関係が絡む近隣諸国との外交関係は何よりも大切にしなければならないことである。殊に、アメリカの退潮、アジアの興隆が起こりつつある現在においては、首脳の相互訪問などを含むしっかりとした外交をして、中国や韓国との友好関係を深めないと将来に禍根を残すことになりかねないことを知るべきであろう。
国民も近隣諸国との友好関係を深め、平和を望んでいるのである。