貴方の家の庭から不発弾が見つかったらどうする?

 2016年5月に大阪のミナミの建設現場で1トン爆弾の不発弾が見つかり、周囲の交通遮断を行い住民を退避させ、近くの南海電車の交通も一時止めて、自衛隊が処理をした事件があった。

 この時、その業者は急遽周囲に防護壁を作り、警備員を配置するなどして安全確保に努めたのだが、その費用を国か市が当然払ってくれるものと思って請求したが、払ってくれないので訴訟となった。

 最近その判決が大阪地裁から出たが、それによると、地方自治法などに不発弾についての明確な規定がなく「支払い義務を課すものではない」ということで業者の請求は却下され、吉村大阪市長も「基本的に所有者が負担すべきであり、正当な判断だ」としている。

 しかし、これでは多くの人の納得は得られまい。不発弾は偶然発見された埋蔵物のようなものではなく、法令規定の問題ではなく、戦争責任に結びつく問題である。戦後処理の一環として行政が責任を追うべきものではなかろうか。もし万一あなたの家の庭で不発弾が発見されたら、誰しも自分の責任で処理しろというのかと開き直りたくなるのではなかろうか。

 土地の所有者が埋めたものではなく、戦時中に米軍によって落とされたものであり、戦争責任が「一億総懺悔」であり、空襲の被災者に対する裁判の判断で言われたように、戦争による損害が「国民が等しく受忍しなければならない」ものであったとしても、不発弾の処理に国や市が責任を取らないのは、国や市が国民の生命を守る最低限の義務を果たさないものと言わねばならないのではなかろうか。

 世の中が次第に再び戦前に似てきているが、この一件からだけ見ても、万一無理やり戦争に引き摺り込まれて被害を受けても国がその保証をしてくれる可能性は薄いと考えた方がよさそうである。事実、先の大戦による被害でも、軍人に対してはある程度の補償もあったが、一般国民の被災者はただ受忍を強いられただけだったことも思い出すべきであろう。これからだけでも絶対に戦争は許してはならない。