外国の政府に救出をお願いするよりない拉致被害者の家族たち

 日本から北朝鮮への拉致被害が起こったのは主として1970年から80年にかけてのことであった。したがって、横田めぐみさんらの拉致が起こってからもう40年近くも経過したことになる。被害者の人数は不明であるが、政府の発表によれば現在17名が被害者として認定されているようである。2002年に小泉純一郎首相が北朝鮮へ行って交渉し、金正日主席が拉致を認め、蓮池薫さんら5人が帰ってこられたが、これらの人たちはこれには含まれていない。

 この時以来、北朝鮮との間では返還への具体的な話は途切れたままで、遺体の骨が返還されたことがあるが、それが他人の骨であるという主張がなされたりしてこじれ、返って被害者の返還の話は途切れてしまった。2014年には特別調査委員会が設置されて拉致被害者の調査が行われることになったが、それすら中途半端な物別れになったままである。拉致被害者の家族の悲痛な思いは想像に絶するものがある。

 その間にアメリカなどは北朝鮮との交渉で、何回か自国の抑留被害者を連れ戻しているのである。ところが、日本の場合には交渉がもつれるばかりで、最早取り返しのつかない時間が経過してしまったのに、今だに救出出来ないでいる。どうして日本だけが連れ戻すことが出来ないのであろうか。日本政府の態度に怒った被害者家族の思いもわかる。政府は本当に救出のために最大限の努力をしたのであろうか。疑問に思わざるを得ない。

 外国に抑留されている自国民を連れ戻すためにはかなりの犠牲を払い、強力な政治力を発揮しなければ成功しない。アメリカなどは大統領経験者などの大者が直接相手国に行って、それ相当の条件を提供して、高価な代価を払って、連れ戻してきているのが現状である。

 日本では2002年以降、拉致被害者の家族たちが必死の思いで「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)を作って、政府はじめ外国にまで働きかけて、長期に渡って活動しておられるが、40年近くたっても今だに救出の見込みさえ立っていない。

 政府は政府に任せろと言いながら何ら有効な手を打たず、ただ北朝鮮を非難するだけで、犠牲を払ってでも救出するといういうような姿勢をとったこともなく、はたから見ていても、アメリカのよう具体的な手も打たず、これでは救出できるはずがない。

 政府は真剣に拉致された人々を連れ戻そうとしているのではなく、拉致問題北朝鮮に対する優位に立てる外交問題として、政治的に利用しているだけだと思わざるをえない。家族会の人たちも高齢化が進み、拉致被害者たちも北朝鮮における生活がそれ以前より長くなり、たとへ帰ってこられても日本に再適応できるか否かさえ問題になる時代になってしまっているのではないかと危惧される。

 もう家族の人たちは政府に頼んでもラチがあかないことを嫌という程知らされておられることであろう。北朝鮮の金正念主席が日本とはいつでも会うと言っているのに、日本政府は「圧力一辺倒」を繰り返すだけで、具体的に交渉しようとしないので、今回の米朝首脳会談のムードの中で、被害者の家族の人たちはとうとう日本政府は当てにならないので、アメリカの政府に頼みに行かれたようである。同じ国民として日本政府のなんと情けないことであろうか。