元乃隅稲成神社

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 2−3年前アメリカのCNNがおこなった「日本の最も美しい場所31選」というのに、金閣寺厳島神社などとともに選ばれてから一躍有名になった、山口県のはずれにある元乃隅稲成神社へ行って来た。

 日本の主な観光地で行ったことのない所などもうあまり残ってないと思っていたのに、こんな所は今まで知らなかったし、写真を見ると断崖絶壁にような海岸に赤い鳥居が並ぶユニークな稲荷神社の姿で、なるほど魅力的なので、是非一度行ってみたいと思うようになっていた。

 そんなところに、たまたま旅行会社の広告で、この元乃隅稲成神社にも寄る山口県周遊のバス旅行をみたので、応募して出かけた。旅では以前に訪れた所が多かったが年月も経っているので悪くなかったし、ここと角島大橋は初めてだったのでまあまあ有意義な旅であった。

 この元乃隅稲成神社は外国人が31選に選ぶぐらいの所だから、こちらが知らなかっただけで、古くからあるお稲荷さんかと思っていたら、実は歴史は浅く、昭和30年(1955年)に地元の網元の岡村斎(ひとし)さんの夢枕に現れた白狐の「吾をこの地に鎮祭せよ」とのお告げが始まりで、今のように123基の鳥居が作られたのはまだ昭和62年から10年ぐらいかけてのことに過ぎないとのことである。私が知らなかったのも無理もない。

 元々この地は本州の西の果てのような所で、日本海の荒波に打ち砕かれた断崖の岩場が続く海岸で、この地の岬の先端は昔から打ち寄せる波が岩に当たって吹き上げるので、「竜宮の潮吹き」として知られていた所らしい。今でも時々3〜4米ぐらい吹き上げる白波を見ることが出来る。

 まだ新しい神社なので鳥居も新しく、海岸べりの存在なので、伏見稲荷のような壮大さや落ち着いた威厳などはないが、青い海に白い波、岩に張り付く緑の樹々、それに青い空、そこに連なる真っ赤な鳥居の行列のコントラストが美しく、外国人が喜びそうな景色で美しい場所31選に入るのもなるほどなと感じさせられる。

 ただ急速に訪れる人が増えて、現地では喜びとともにその対策に大わらわのようであった。元々辺鄙な断がい絶壁のような所である。駐車場など作るようなスペースもないような土地である。訪れた時にもまだ道路や駐車場を作っている途中だあったが、果たしてこの辺鄙な土地に将来いつまで多くの人が訪れてくれるであろうか。大金を投じて受け入れ態勢を整えても果たして将来ん渡ってペイできるものだろうか、他人事ながらふと不安な気がした。

 それはそうとして、この神社で景色以外に面白いのは、御神体を津和野にある太鼓谷稲成から勧請してきて貰っているので、稲荷神社は普通「稲荷」と書くところを、ここと津和野の元宮だけは「稲成」と書くということや、賽銭箱がこの神社では社に近い一番高い所にある6米の大鳥居の上にあり、賽銭を下から投げて、入れば願が叶うという遊び心にも適った仕掛けのあることなどであろうか。

 少し不便な所にあるお稲荷さんではあるが、機会があれば一度訪れてみるのも悪くないのではなかろうかと思われた。