のれんのある町

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 数日前に岡山県の北部の山あいにある中国勝山を訪ねた。そこからさらに北へ行った所にある有名な湯原温泉には、まだ父母が健在な頃に子供たちも連れて家族で出かけた思い出があるが、その時はバスの乗り換えか何かで勝山も通ったような気がするが、ただ通過しただけで、町の景色の記憶はない。

 今回は、女房が新聞か何かで勝山が古い町並みを保存し、店々に草木染めなどの暖簾を掛けるなどして観光に力を入れていることを見て興味を示し、行きたい場所のリストにあげていたので、興味をそそられ出かけることにしたものである。

 岡山まで新幹線で行き、駅前から長距離バスで約2時間かけJR中国勝山駅に到着した。勝山は岡山市の東部を流れる旭川の上流に沿った出雲街道の通る山間の宿場町で、昔は二万三千石の三浦家の城下町でもあり、また近在の木材の集散地で、旭川を経た高瀬舟による舟運の基地でもあったなどと、この地方の中心的な街として古くから栄えていた町のようである。

 このような歴史的背景から出雲街道沿いには古い商家や酒蔵などの家並みが揃い、それらが良く保存されてきたので、1985年にいち早く岡山県で最初に町並み保存地区としての指定を受けたようである。以来、観光にも力を入れて、住民の努力で草木染めの暖簾をそれぞれの店先に掛けることが推奨されて拡がり、「のれんのある町」として知られるようにもなったそうである。

 街を歩くと軒並みに、色々とその店にあった違った暖簾がかけてあり目を楽しませてくれる。染色は1ヶ所でしているが、柄はそれぞれの店の注文によっているそうで、その店にあったデザインや、抽象的なものも多く、中々垢抜けたものも見られる。酒屋は醸造酒銘の、郵便取次をしていた所はポスト模様、理容店では櫛をイメージしたデザインなどというのも面白い。一軒キリスト教の教会があったが、そこにも百合と十字架をあしらった暖簾がかけられているのも微笑ましかった。

 こうして暖簾を見ながら街を散策した後には、少し離れたところに武家屋敷が公開されていたし、また小高い山裾には何軒かお寺が並んでいたり、三浦家ゆかりの神社などもあり、昔懐かしい風情の田舎の町を結構楽しませてくれた。お寺の墓地に散在していたは真っ赤な彼岸花が丁度見頃で、中々見事であった。

 中国山地の山合いにまだこのような古い街並みが残り、白壁や格子窓とモダンなのれんの組み合わせもユニークでなかなか貴重なもので、この風景は是非いつまでも保存しておいて欲しいものだと思わずにはおれなかった。

 ただ心配なのは全国的にどこでも同じだがだが、少子高齢化や人口減に伴う地方の過疎化がこの町でもやはり忍び寄っていることである。JR勝山駅も駅舎は立派でも、今では通る列車も一日数本に過ぎなくなり、構内は列車を待つ人もなく閑散としており、駅前にあるバス乗り場の方がコミュニティバスも止まるので待っている人がいくらかはいる有様である。

 商店街にも人通りがなく、わずかな観光客には出会ったが、これで街道の商店や食堂などはやっていけるのだろうか。この懐かしい風景もいつまで維持できるのだろうかとふと心配になった。