事故の損害を客に払わせる会社

 幾ら何でもひどいと思いませんか。ある料理屋の出した料理でそれを食べた客が中毒を起こし、そのため営業停止になって損害の出た料理屋がその損害を客に要求したらどう思いますか。あるいはそれほどでなくても、ある自動車会社が販売した車のエアバッグが不良品で事故を起こし、それを取り替えるのにその車の購買者から取り替え費用をとったとしたらどうでしょう。

 後者の場合でも、けしからん。誰が払うものかということになるだろうが、ましてや自分が被害を受けている人や、全く関係のない人にまでその原因を作った会社の損害を払わせるなど、誰しも怒り心頭に達し、怪しからんじゃないか、弁償すら不十分なのに何故事故を起こした者に被害者側が事故処理費を払わなければならないのか。どう考えても筋道が違っているであろう。

 ところが、原発事故を起こした東電の場合には、その現実離れの論理をそのまま通そうとしているのである。福島第一原発の事故処理費は見直すごとに高くなり、最近国が示した試算では3年前の2倍の21.5兆円にまで膨らんだということらしい。これは当然事故を起こした東電が支払うべきであるが、大きな会社はいいものである。

 会社が潰れると賠償できなくなるからという理由で、政府が51%の株を所有して会社が倒産しないように援助するとともに、法的な追加支援策なども用意し、エネルギー対策特別会計などを作って、原発事故の前には電気料金に賠償について備えが含まれていなかったとして、その過去の分までをどんどん高騰する事故処理費を賄うために、今後の電気料金に組み込んで、40年以上の先まで国民から徴収しようもとしているのである。

 国民の中に直接、間接の被害者も多いし、ましてや原発事故後に生まれた人にまで事故の処理費を払わせようとしているのである。本来ならば事故処理費を支払えない会社は当然破産し経営者などの責任が問われた後に、事後処置として新たな電力会社を立ち上げるべきところであるが、色々な思惑から東電を潰さないで事故処理費を賄うために政府が考えたのが、この電力料金に上乗せするなどの事故処理方法なのである。

 これでは電力会社は今後も事故の与える国民への影響や、その責任、事故の処理を心配することなく原発を再開運営できることになる。自らの責任である事故処理費は当然会社が潰れてでも責任を取るべきで、政府に頼ったり、ましてや顧客から巻き上げることが許されるべきではないだろう。

 国民は声をあげて政府の不当な支援をやめさせ、東京電力に最後まで責任をとらすべきである。それが原発依存をやめさせ、将来の電力政策をまともな路線に載せることに繋がるのではなかろうか。