年末の箕面

 毎月一回は箕面の滝まで歩くようになってからもう10年ぐらいになる。いつもは大抵月の初めに朝早く行くのだが、この12月は何やかやで遅くなってしまい、年の瀬も迫った29日に、それも10時ごろにやっと出かけることができた。

 もう文字通りの年末で誰しも忙しい頃だろうから空いているだろうと思って登り始めた。いつもと違い、10時ごろで遅い朝日がようやく谷にも届く時分であったが、思ったよりも滝道を歩く人が多いのに驚かされた。

 12月の29日といえば本当の年末である。昔なら一家総出の大掃除や正月の準備など何処の家でも一年で一番で忙しい時であったが、時代もすっかり変わってしまった。今では大掃除もなくなり、正月の準備も簡素になり、仕事や学校も休みとなると、年末の片付けといっても、家ですることは昔ほどにはない。

 故郷へ帰る人も多いが、今や次第に帰るべき故郷を持たない人も多くなっている。私が子供の時に既に帰るべき故郷というものがなく、友達たちが田舎へ帰るというのが羨ましくて仕方がなかったものなので、一世代も二世代も違う今の若い人たちには故郷のない人もはるかに多くなっているはずである。

 滅多にない纏まった休みの取れる正月を利用してヨーロッパなどへ旅行するのも良いが、あちこちでのテロ騒ぎで、物騒な感じがするので海外旅行もひと頃のような活気はないようである。せいぜいアジアの近隣国へ行くぐらいのことになりやすい。景気も良くなく、老人が増え、人口が減ってきていることも正月の人々全体の動きに関係していることであろう。

 そうなると年末は久しぶりで自宅でゆっくり休養をとったりするぐらいで時間を持て余す人も出てくるのではなかろうか。せいぜい子供達でも連れて近くの散歩にでも出かけようかということで、箕面の滝あたりが最適の場所として選ばれるのであろうか。事実いつもより家族連れに出会うことが多かった。

 今年はもう終わるが、来年はどんな年になるのであろうか。道で出会った人や滝の前で休んでいた人たち、ジョッギングで追い抜いていった人たち、どの人たちにとってもちょっとは良い年になって欲しいものだと思いながら今年の箕面の滝への月参りを終えた。