JR伊丹駅のホームのベンチ

 先日、伊丹の美術館へ行った帰り道、いつものようにJR伊丹駅から帰ったが、その時驚いたのは、いつの間にかホーム備え付けのベンチが線路となんと反対側を向いておかれているではないか。狭いホームの線路に尻を向けて、反対側の垣根になっている金網のすぐ前にあり、そこから外の景色でも見よと言わんばかりになっている。

 以前は普通に線路の方を向いて座るようになっていたはずだが、最近付け替えられたようである。反対側を向いて外の景色が見えるとはいうものの、座ればすぐ目の前に金網の垣根があり、ゆっくり足を伸ばして座る空間もないぐらいで、外の景色を見て楽しめるというようなものではない。

 どうしてこんな変な配置にしたのか怪しんだが、実はどこにでも見られる従来の線路に向いたホームのベンチは座っていた酔っ払いが、立ち上がってそのまま前方に進み」線路に落っこちる転落事故が多いのだそうで、それを防ぐためにJR西日本ではホームの椅子を皆線路に対して直角に置くように変えていっているということである。ところが、伊丹駅ではホームの幅が狭いので、横向きに置くことができないので、窮余の策として反対向きにしたのだということらしい。

 こうすれば上記のような酔っ払いの事故は確かにに減るであろう。しかし実際にJR伊丹駅のベンチに座ってみるとわかるが、金網の垣根があまり近すぎて、気になり、外の景色を見て楽しむどころか、狭い空間に押し込まれたような感じがして落ち着いて座っておれない。それにうっかり黙って座っていると、電車が来ても気がつかず乗りそこなってしまう恐れも出てくるのではなかろうか。

 実際私は昔ベルギーへ行った時、とある駅のホームで、反対向きのベンチに腰掛けていて電車が来たのに気がつかず、乗り遅れてしまった経験がある。

 確かにこうすれば事故は防げるであろうし、駅の係りの人がベンチの置き方に困られた事情もよくわかるが、乗客の流れに反して後ろ向きに座るのはどうもすわり心地が良くない。せめてもう少し金網までの距離があれば良いが、現状では無理やり反対向きの狭い空間に押し込まれた感じがしてゆっくり座っている気がしない。

 酔客対策など、鉄道輸送の会社の安全対策のご苦労はわかるが、やはり少しはリラックスしてゆっくり座って電車が来るのを待つぐらいのゆとりは与えて欲しいものである。