約束は新しい判断で反故にする

「約束は新判断で反故にして消費税増しまた延期する」

 前回の選挙で消費税増税延期をした時に、再度の延期は特別のことがない限り絶対ないと断言までしておきながら、アベノミクスが失敗してどうにもならず、再延期せざるをえなくなったのに、自分に都合の良い数字だけ並べて失敗を認めず、約束を守れなかったことに対する謝罪もなく、「約束とは異なった新たな判断によって」と、論理も通らぬ言葉で平然と増税再延期を話す図々しさには呆れて物も言えない。

 歴代首相にも見られたことのない教養を欠く傲慢な態度と言わなばならない。アベノミクスは成功したが、世界の状況が悪いのだと責任転嫁して、平然としている。財務省の知らない自分に都合の良い資料まで作らせていたとかとも言われる。まるで独裁者の振る舞いである。

 もちろん、この首相の態度は今に始まったものではない。これまでの国会での様子を見ても、自ら野次を飛ばしたり、答弁をはぐらかしたりする上に、内閣の責任者は私だと言ったり、立法府の長まで自分だと言ったりした傲慢な態度を繰り返している。

 今回でも、G7で経済の情勢がリーマンショック並みだと言って、それを消費税増税延期の口実にしようと思ったが、各国から反論されて思惑が外れた。それでも世界の注目する公式の場で「G7はかかる認識で強い危機感を共有した」と発言しておきながら、議会では「私がリーマンショック前の状況に似ているとの認識を示したとの報道があるが、全くの誤りである」と言っている神経は常識では考えられないことではなかろうか。

 以前を振り返れば、TPPについても、選挙の時には「ウソはつかぬ 断固反対TPP」というビラを大量に撒いておきながら、実際には多くの人の反対を押し切って交渉に参加し、内容の説明もしないまま条約を承認しようとしている。

「嘘つかぬ断固反対TPPビラには書いて実は承認」

 もっと遡れば、オリンピック招致に際しては、誰が見ても国内的にはまだまだ放射性物質の拡散が問題だったのに、それを無視して「放射性物質の拡散に関しては完全にアンダーコントロールだと大見得を言ったりしていたことも思い出される。

放射能アンダーコントロールと言ったけど吾れ故郷には未だ戻れず」

 こういう首相の政府が選挙の時は経済問題だけを争点にして、選挙が終わればアメリカの言うなりに自衛隊の海外派遣や戦争のできる国づくり、秘密保護法などの言論抑圧、戦争法案、憲法改正の政治的課題を強引に進めてきたことを忘れてはならない。

 戦争時代を生身で経験している我われの世代からすると、今の政治の進め方は危なっかしくて見ておれない。私は立憲主義の破壊、憲法改正、民主主義の破壊、戦争法案などには絶対反対である。このまま進めば戦前の苦い歴史を繰り返すことになり、この国は今度こそ回復不可能な破滅に陥るのではないかと危惧される。

 現に世の中は次第に戦前に似てきている。ここらで踏み止まって少し方向を変えなければ、またもや誰にも止められなくなるのではなかろうか。今度の参議院選挙がそれを決める一つのエポックになるのではなかろうか。

 私はいつまでも生きているわけではないが、故郷であるこの国の消滅を想像したら死ぬに死にきれない思いである。なんとか多くの国民に頑張って貰い、平和な日本を守って欲しいものである。