熊本地震への米軍オスプレイ派遣

 新聞の記事によれば今度の熊本地震の救援活動の一環として、米軍からの申し出によって、沖縄駐留のオスプレイ4機が岩国基地に飛び、そのうち2機が南阿蘇村に救援物質を運んだという。普通に読めば、アメリカがまた「友達作戦」により、今度はオスプレイの宣伝も兼ねて、スタンドプレイをして見せたのだということになろう。

 中谷防衛相も18日の参議院の決算委員会で、仁比 議員(福岡県の弁護士)の質問に対して、『米軍からの協力の申し入れがあった』と答弁。記者会見でも同様の発言を繰り返してきた。

 ところが、アメリカ軍の準機関紙「星条旗」の18日付(電子版)は、『日本政府が16日、米国務省に震災支援を要請した』と報じており、日本政府がオスプレイなど米軍の支援に言及したのは翌日の17日ということになる。アメリカからの申し入れではなく、日本政府がアメリカに頼んだというのである。

 こうなると、中谷防衛相の国会答弁とは全く正反対であり、大臣が国会で嘘の答弁をしたのか、「星条旗」の記事が誤報であるかのどちらかでしかない。ただ、日本が米国に依頼したという何でもない記事をわざわざ誤って書く可能性は低いと思われる。

 オスプレイ飛来を引き受けるために、南阿蘇村ではヘリコプターと違ってオスプレイでも着陸しやすいより広い平坦な広場を用意し、ハワイでオスプレイが砂を吸い込んで墜落したことがあるので、着陸前には自衛隊員がホースで水を撒いて着陸に備えたそうである。その上、運んできたのはダンボール箱200個強に過ぎなかったとか。

 しかも中谷防衛相が国会での答弁で、「自衛隊が持っているヘリなどの運用をもってしてもまだ十分に行き届いていない」とオスプレイ導入の理由を述べているが、オスプレイの活動中はそれまで救援物質を運んでいた自衛隊のヘリコプターは飛ばずに待機させられていたということである。

 こう見てくると、このオスプレイ派遣は政府がオスプレイ佐賀空港配置の地ならしなどを考慮して、オスプレイの宣伝に地震を利用しただけで、本当に必要があって行われたものではなく、政府の地震を利用したパーフォーマンスだったということのようである。

 国会での答弁が嘘であれば、中谷大臣を弾劾しなければならないが、新聞は注意して読まなければならないし、国会の答弁でさえ、耳をほじくって真偽のほどを疑って聴かねばならないことを、教えてくれた新たな出来事であった。

追補:オスプレイの専門家で米国防総省の国防分析研究所のレックス・リボロ元主任分析官も「自衛隊が大型輸送ヘリCH47を約70機も保有しており、いつでも投入できる体制にありながら、なぜオスプレイを使う必要があったのか」と首をかしげたとか。