日本の国際比較

 この間の新聞に「子の貧困格差日本、下から8位」という記事が出ていた。ユニセフ国連児童基金の報告書によるものだが、子供のいる世帯の所得分布をもとに、下から10%目の最貧困層と真ん中の標準的な子どもとの所得格差が小さい順に順位付けしたものだそうである。

 日本では、最貧層の子供の世帯の所得が、標準的な子どもの4割にも満たず、対象となった41ヶ国中34位であったそうである。上位を占めるのは北欧勢で、ヨーロッパがそれに次ぐが、韓国が15位とぐっと良く、アメリカでさえ日本より上の30位であった。

 最近の日本では、子どもに限らず国民の所得格差が大きくなっていることが問題になっているが、20世紀の終わり頃までは一億総中流などと言われていた国の落ち込みようは情けないものである。世界の経済の停滞なども関係しているのだろうが、アメリカに追随し、トリプルダウンなどと称した大企業優先の政治の失敗が原因であることを示すものであろう。

 この国際比較を見て思い出したのは、二、三ヶ月前であろうか、日本の報道の自由の国際比較が新聞を賑わしたことである。そこでは安倍政権になってから、その前には11位であったものが61位まで下がったという報道であった。

 それは最近の高市総務大臣のテレビ放送電波取り消しの発言や、この三月の終わりに著名なテレビのキャスターが3人も同時に辞めたことなどからでもわかる政府の報道機関に対する暗黙の圧力が強まっていることにも照合している。事実最近では政府に都合の悪いことを新聞が報道しないことが多くなっている。ワシントンポストが社説で日本の報道機関への政府の圧力を取り上げているぐらいで、極めて危険な兆候と言わねばならない。

 こんな国際比較が続いたので、他にも色いろな国際比較があるのではないかと思い、グーグルを見てみると、今は便利になったものである。いろいろな国際比較が羅列してあり、片端から調べられるようになっている。

 それを見ると、名目 GDPはさすがに日本は未だ3位であるが、つい2〜3年前に中国に抜かれたと思っていたら、もはや中国のGDPは日本の2倍にもなっているし、4位のドイツと日本の差はそれほど大きくない。それに一人あたりのGDPにすると、日本は27位に下がり、経済成長率となると、もう目も開けてられない188国中の172位という惨めなことになってしまうが、現状を見れば仕方がなかろう。

 今度は男女平等度の国際比較を見ると、これも136ヶ国の105位と言う情けない順位である。しかし、これは最近の新聞を賑わしている自民党議員の女性蔑視の発言などからもわかるように、日本では最近の時代の風潮に合わせて、建前では男女同権だの女性の活躍などと言って誰も反対しないが、心の中ではまだまだ男性中心、女性蔑視の考え方を持っている人が多いことを示唆しているのではなかろうか。

 いろいろ国際比較を見ていくと下の方に平和度というのがあった。どうやって比較したのか詳しくはわからないが、これが日本はなんと上から8位で光っている。おそらく平和憲法を持ち、外国の戦争に参加して戦ったことがないことなどが、評価されたものであろう。これだけは自慢しても良いような順位である。

 ただし最近のこの国の動きを見てみると、この誇るべき平和度を突き崩すような動きばかりが起こっているので、やがては報道の自由度と同じように急速に順位が落ちてしまうのではなかろうか。秘密保護法や戦争法案と言われる安保関連法などが無理やり可決され、憲法まで変えようという動きが強まっている。

 この夏の参議院選挙が一つの分水嶺になるのかもしれないが、せっかく第二次世界大戦の苦い経験を踏まえて作られてきたこの国の平和憲法を護り、戦争への道を絶ち、せめてこの栄えある平和度8位だけはいつまでも守って行きたいものである。

補遺:昨日の夕刊(朝日新聞2016.4.20)によると、日本の報道の国際比較は同じ「国境なき記者団のランキングで上記の61位から72位にまで更に下がった由である。

 なお、国際経営開発研究所の世界競争力ランキングで日本は1992年1位だったが、2015年は27位に落ち、生産性と効率性も14年から15年に24位から43位に下がっている由(中央公論5月号)、これらも日本の現状を知る参考にするべきであろう。