心臓病のリハビリ運動

 先日心筋梗塞で入院した循環器病研究センターには入院患者や外来患者を対象としたリハビリテーションも行われており、それ専用のかなり立派なリハビリ棟がある。

 あちこちのスポーツセンターで見られるようなトレッドミルや自転車漕ぎなどの設備もいろいろ備えられており、医師の指導のもとに病状に合わせて多くの理学療法士によってかなり積極的に心疾患のリハビリテーションが行われている。

 昔は心臓が悪いとほとんどの場合、運動制限、安静が強いられるのが普通であったが、近年は心不全があってもそれに合った運動をしている方が安静にしていた人たちよりも生命予後がよいことがわかり、心疾患の人にも監視下のリハビリで少しづつ運動させるようになってきている。

 私も心筋梗塞で救急入院し冠動脈にステントを入れて貰ったあと、落ち着いてから退院する前に二日ばかりリハビリ部門のお世話になった。結構流行っているというのか、思ったより多くの人が来ていた。外来で来ている人たちの中には、スポーツクラブにでも来ているのではないかと思われるような、頑健そうでスポーツマンの出で立ちで靴もスポーツ用の靴を履いている人も見られた。

 医師の面接の後、理学療法士が指導して心電図のモニターをつけ、始めと終わりには血圧を測り、下肢のストレッチ運動をしてから、最初は椅子の背を持ちかがとを上下する運動、次いで椅子から立ち上がる運動を何回か繰り返す。それが済むとトラックを何分間かトラックに埋め込まれた電気サインのリズムに合わせて歩く。さらにはトレッドミルや自転車を漕いで血圧、脈拍、心電図の変化のチェックもした。

 いろいろ基本的な運動のやり方などを教えてもらったのはありがたいが、機械による運動はどうも好きになれない。同じ歩くなら外の道を歩きたいし、自転車なら郊外の道でも走る方がずっと気持ちが良い。それに機械のリズムは初めは自分に日常のリズムと違って合わせ難い。自分のペースで好きなように歩きたくなる。

 日頃の歩き方には少し速かったり遅かったりする微妙なリズムがあるようで、トレッドミルの機械の一定のペースとはどこかそぐわない。トラック歩行もリズムが合わせ難いし、無理に機械のリズムに合わせようと気を使うのも気持ちが良くない。自転車漕ぎもせっかく乗るのなら動かない自転車より、景色の変わる郊外の道でも好きなように走りたくなる。

 もちろん定量的に評価するには機械に頼るよりないが、機械に依存して体を動かすのはどうも気が進まない。退院後も外来で通って続けることも出来たようだが、家で続けるからということで断って退院した。

 もともと、スポーツクラブについては、機械を使って歩いたり、自転車漕ぎをしている人たちを見て、まるで檻の中でリスが車を回しているよう思えて、皮肉な見方をして来たせいもあるのであろう。ことに忙しいサラリーマンなどが車でスポーツセンターに乗り付け、屋内で一時汗を流して、また車で帰宅するということでないと運動が出来ない様は今でも現代社会を象徴したカルカチュアと思えてならない。

 やはりスポーツは屋内ではなくて広々とした野外で楽しみたいものである。