赤ちゃん猿の命名騒動

 最近新聞を賑わしたものに大分県高崎山の自然動物園で生まれた赤ちゃん猿の命名騒動があった。この動物園では毎年その年に初めて生まれた猿の名前を公募して決めているのだそうである。それで今年も例年のように公募したところ、丁度、英国の王室に最近生まれた王女の名前が決められた直後だったこともあり、その名前と同じシャーロットが一番多かったのでそう名付けたようである。

 ところが、「猿に同じ名前をつけるのはけしからん」「英国王室に失礼だ」「配慮がない」などとする苦情が300通も届いて騒動となり、大分市もそれに対する対応を考慮せざるを得なくなり、英国総領事館に問い合わせたりして大変なことになったようである。

 おそらく王女でなくても、自分の子供でも同じ名前を猿に付けられたら嫌だと感じる人もいるのではなかろうか。それだけ人間より猿は下等だと思いたがる人が多いからではなかろうか。これがパンダやイルカなど他の動物、あるいは犬や猫ででもあればそれほど問題にならなかったのではなかろうか。

 猿が家畜にも愛玩用にもならず、何処にでもいて、人間に一番近い賢い動物であるだけに、その猿よりは自分たち人間の方がましだと思って、安心を得ようとする心が無意識にでも働くのであろうか。そのために他の動物と違って猿の場合には必要以上に猿を貶めようとする傾向があるようである。似て非なるものが一番気になるのである。人種偏見にも似たところがある。

 それにしても、例えそのように感じたとしても、こんな些細なことをどうしてすぐにけしからんとしてこんなに騒ぐのであろうか。シャーロットなどという名はありふれた名前だからどこにでもあるようなもので、それが王女の名前と一緒であっても一向に問題ではなかろう。愛犬や愛猫に人の名前を付けることだってよくあることである。

 何故こんなことで騒ぎが起こるのだろうか。ひとつにはネットが流行るようになると、そこではちょっと思ったことを深く考えもせずに無責任に気軽に発言する人が多いので、それに習ってその場限りの無責任なクレームもつきやすくなったのであろうか。

 まさか、英王室を日本の皇室からの類推で特別扱いをするべき敬われる存在だと考える人が多くなったためとも考えにくいが、「日本の皇室関係者の名前が、外国で動物の名前になったらどうする」という意見も寄せられていたようである。大分市が考慮に入れなければならなかったことには皇室や王室崇拝を強いる時代背景もあるかも知れない。それでもやはり猿と同じでは叶わないのが先であろう。

 結局、英王室の広報が鷹揚に「赤ちゃん猿の命名は動物園の自由です。」と語ったのを受けてやっと騒ぎが収まり、猿の赤ん坊もそのままシャーロットと決まって一件落着となったそうである。

 大分県高崎山の猿は昔から有名で時にニュースになったこともあったが、ここのところあまり一般に接する機会がなかった。久しぶりでよい宣伝になったのではなかろうか。 

 もともと名前の募集時の条件では五文字までということだったのに、六文字のシャーロットを選んだりしているのを見て、この騒動を動物園が宣伝効果をねらったものではないかと穿った見方をする人もいるようである。それは兎も角、赤子猿のシャーロット嬢はきっと人気者のなることであろう。