アメリカの人権侵害

 アメリカでミゾリー州のファガーソンで黒人の少年が警察官に撃たれて殺された事件に続いて、ニューヨークでも黒人の男性が大勢の警官に取り囲まれ首を絞められ殺された事件が起こった。

 いずれも無抵抗の市民に対する警察官の暴行である。後者の場合にはスマホ?で撮られた映像が一部始終を映し出しており、誰が見ても大勢の警官によるリンチということがわかる。

 にもかかわらず、いずれの事件でも大陪審が警官の不起訴を決めたので、全米のあちこちで抗議の声が上がり大規模なデモが起きるなど、社会的な問題となっている。

 アメリカは世界中のあちこちで他国の人権侵害を非難しているが、それより先に自国の人権侵害にもっと目を向けてそれを改善すべきではなかろうか。今やインターネットなどのおかげで世界中の人が見ている前でのリンチ事件である。

 アメリカの人種差別の根は深く、未だに人種による社会的な差別がいたるところに強く残っている。そうしたところにこのような人権侵害が平然と行われる下地がある。

 一例を挙げれば2010年から2012年の間に警官に射殺された少年の数は、白人少年1人に対して、黒人少年は21倍となっている。これはたとえ黒人に犯罪が多いとしても、警官による黒人少年に対する差別的な人権侵害が行われているとしか考えようがない。

 どこの国も完全ではない。その国の歴史の発達段階に応じて種々の問題を抱えている。その歴史を踏まえて解決するよりない。他国の人権侵害を非難するより前に、現に直面している自国の差別や人権侵害を自国で解決していくことを優先すべきではないか。

 この文を書いたすぐ後で、イラク戦争などに絡みCIAがテロの容疑者として捕まえた者に対して拷問を行っていた事実も明るみに出た。これは国際法にももとる組織的な犯罪であり明から様な人権侵害であることを付け加えよう。