椅子の脚から大根を経て骨へ

 明治時代になって日本が初めてパリで開かれた万国博覧会に参加した時、出席した着物姿の日本女性をパリの人が見て日本人の脚の細さにびっくりし、まるで椅子の脚のような細い脚をしていると言ったことを昔何かで読んだことがある。

 ところが、戦後私たちが若い頃には、女性の脚の太さを評してもっぱら「大根足」という言葉が流行った。昔は椅子の脚と言われていた脚がいつの間にか大根のように太く成長したのかと思われたものである。その頃は背丈も六等身なら、脚も大根、短足短身、それが日本女性の特徴だなどと当時の若い男性の我々の間ではひそかに囁かれていたものである。

 ところが最近フェースブックだったかツイッターだったかかを見て驚いた。あるアメリカ人が日本女性の特徴としてあげている中に「日本の女性は骨のような細い脚で歩いている」と書いているではないか。最近の日本ではアメリカでよく見かけるような若い肥満の女性は殆ど見かけない。背も高くなったし、痩せ型ですらりとした体型の女性が多くなったのは事実である。骨だけと言うのは少しオーバーであろうが、アメリカでみる平均的な女性像と比較してみると確かに最近の日本の女性には病的とも言えるぐらいにスリムな人が多いのが気になる。

 街や電車の中で確かめてみても、この頃は惚れ惚れするぐらいすらっとした長い脚の人が多くなっている。もう「大根足」の時代ではないようである。スリムが好まれ女性は皆ダイエトなどしてでも強いて痩せるように務めているためであろうか。

 今日見た女性など背が高いのにあれだけの体をあんなに細い脚で支えられるのかと思うほどぴったりサイズのパンツの脚は細かった。骨だけのような表現もあながち誇張とも言えないかも知れない。いつの間にか「大根足」はまた「椅子の脚」のような「骨だけの脚」に戻ったようである。

 ただ大根足の弁明として、椅子の脚と言われたのは着物姿からはみ出した脚だから足首のことであったのであろうが、「大根足」の判断はもっと上のふくらはぎなども含んだ脚を指すのではなかろうか。大根でも端は細くしぼられているわけで、戦後の「大根足」と言われた脚も足首に限ればは細かったのかも知れない。

 いずれにしてもこの頃はびっくりするぐらい長い足をした綺麗な女性も多くなったが、今回の骨のように細い脚というのは足首だけの話ではないようなので、ダイエトし過ぎであまり痩せて骨のような脚にはならないように願いたいものである。