人口減少社会

 少子高齢化が進み、日本の人口は今後次第に減少し、このまま進むと五十年後の二〇六十年には八千万人ぐらいに減ってしまうそうである。それに対して知事会は地方の崩壊を恐れて非常事態宣言を出し、政府も危機感を感じ、その時にも何とか一億の人口を維持するための長期ビジョンと、それに対する総合戦略を今年中に纏めることになったそうである。

 南北の朝鮮が合体すれば人口はおよそ七千万になるが、それに比べても人口減や少子高齢化による国の衰退を憂うるとともに、年金や社会保障制度の維持や国内市場の確保、若年者の負担の軽減などのためにも何とか一億人の人口は守るべきだと考えられているようでる。

 しかし、それほど人口一億人にこだわる必要もないのではないかとする考え方も少なくない。われわれの子供の頃の人口は七千万人程度で、朝鮮半島の人口三千万を合わせてやっと一億となっていたが、それでもこの小さな島国には多すぎるというので、移民や満蒙等への積極的な移住が国策として奨められていたぐらいである。

 それに地球レベルでみれば、今でも人口減より爆発的な人口増加の方が問題であり、人口減はむしろ好ましいとする意見もあるが、人口ばかりでなく少子高齢化という人口構成の変化や、人口の一極集中化などがより大きな問題とも言える。たとえ人口減による経済規模の縮小があったとしても、それよりそこに生きる人々の生活内容、幸福度が問題であろう。

 またこれまでの歴史を見ると、国は戦争までは生めよ増やせよと号令をかけ、戦後の高度成長時代の真っ盛りには人口増加に歯止をかけるべく、産児制限を進めたり、妊娠中絶を黙認したりした末に、また出産をすすめるなど時による御都合主義的な政策をとってきたが、国が人々の生き方にまで干渉するのはおかしいと感じる人が多い。

 更に、人口減は日本に限ったことではなく、先進国では軒並み見られる現象であり、女性の出産や育児は生活に根ざした女性の意思によるものであるから、社会的条件が近未来に激変することでもなければ、政策によって人口減を食い止めることは難しいであろう。

 無理に産めよ増やせよというより、人口減を前提とした雇用や、社会保障福祉などの問題について、たとえばもっと外国人を受け容れることを考えるなど、必然的な人口減少社会にあった施策を今から考えて行くべきではなかろうか。