映画「男と女 人生最良の日々」

 上記の映画を見た。フランスのクロード・ルルーシュ監督が1966年に制作した映画の主演俳優の男女がともに健在なので、それなら3人で人生の黄昏を描こうと思って作ったという映画だそうである。

 昔の作品の名場面を挿入して、今は老人ホームに入所していて、記憶も定かでない老人に昔の日々が蘇るというストーリーになっている。

 老人が一人の女性の思い出ばかりを語るので、息子がその女性を探し出して会いに来て貰うところから始まり、過去の前作の場面などがシャンソンのメロデーに乗って展開するが、中々良く出来ていて、車のフロントガラスに過去の男女の顔が薄く映りながらパリの町々を走り抜ける過去の映像などユニークであった。久し振りでフランス映画の雰囲気を味わった感じがして、懐かしい思いにさせられた。

 「人生の最も美しき年代」という原題は、老いも若きもこれから始まる人生こそが美しいと主張しており、映画は過去の追憶と現在が一緒になった老人の姿を美しく描いているが、現実は無理やり老人ホームへ入れられて、ホームの生活にも馴染めず、密かに脱走を試みようとしている老人の現実をも踏まえて作られている。

 監督が「複雑な主題は出来るだけ洗い、単純にする。僕の場合は、まず音楽があり、そこから映像が生まれる」と言っているそうだが、この映画がアメリカ映画と違った、情緒的な奥行きのある映画になっているのは、このシャンソンと映像がうまく一致しているからであろう。