よっこらしょ

 これまであまり気がつかなかったが、歳をとってからいつとはなしに、立ち上がる時などに、自然と「よっこらしょ」と小さな掛け声をかけるようになった。若い時のようにパッと元気よく起き上がれないので、自然と自分で自分に号令をかけて立ち上がらせているのであろうか。

 気が付いて、1日に何回ぐらい言うのか確かめてみると、正確に数えてみたわけではないが、10回以上は言っているのではなかろうか。先ずは、朝目覚めて、布団から起き上がる時には必ず出てくるようである。掛け声に励まされて起き上がり、布団から出て服を着替えることになる。

 玄関で靴を履き、出かける時にも「よっこらしょ」と掛け声をかけて立ち上がり、玄関の扉を開けることになる。帰ってきた時にも、玄関に入り、腰掛けて、靴紐を解き、靴を脱いだ後にも、やはり知らずに掛け声が出て、起き上がり、部屋へ入って行くことになる。

 その他どんな時だろう。長道を歩いて一休みしたり、そうでなくても、公園などでベンチに腰を下ろす時、そしてまた立ち上がる時にも、大抵「よっこらしょ」と声を出しているようである。

 家の中でも、何かして動き回った後に椅子に座る時もそうだし、座ったまま何かして、済ませて、再度立ち上がるような時にも、気がついたらやはり「よっこらしょ」と言っている。歳をとるとともに、その回数も増えているような気がする。

 別に掛け声をかけなければ、立ち上がったり、動き始めたり出来ない訳ではない。意識して黙ってやろうと思えば、それも可能である。自分でも気がつかないうちに、自然と口にしているだけであるが、やはり体の動きが悪くなったのを、脳が自然とプッシュして励ましてくれているのであろうか。

 こうして影の「よっこらしょ」の声に励まされて、わが老人は今日も何とか動いているようである。