大学入試共通試験

 大学の入学試験については、最近は関係がないので関心も薄く、詳しいことは分からないが、このところ大学入試を見直すべく、検討が加えられていることは知っていた。

 英語については読み書きだけでなく、聞く話すの会話能力を高めなければいけないというので、入試の共通試験でも取り上げることになり、また、国語や数学でも、読解力が必要だということから、記述式問題を課するようになるそうである。

 ところが、これらの新たな方式を取り入れるとすると、問題が複雑になるので、試験の採点などが大変で、それをどうするかが大きな問題となり、種々検討されて来たが、いよいよ来春の入試からそれを実施することになっていたようである。百万近い受験生を対象とするので、その実施はかなり大規模なものとなり、結局種々問題を残したまま、民間委託で乗り切ろうということになったらしい。

 そうした経過の中で、今週の内閣改造で新しく文科大臣になった萩生田氏が、大学入学の共通試験について、民間に委託され複雑になった英語の会話能力試験について聞かれて言った言葉が問題になった。

 民間試験を使うことに関し、「お金や、地理的な条件などで恵まれている人は何回も受けて練習できる。その不公平、公平性ってどうなんでしょう」という趣旨の質問に対して、萩生田氏はこう答えたのだった。

「それ言ったら、『あいつ予備校通っていてズルいよな』と言うのと同じだと思うんですよね。裕福な家庭の子が回数受けて、ウォーミングアップが出来るみたいなことがあるかも知れないけれど、そこは、自分の身の丈に合わせて、2回をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえば」と。

 萩生田大臣は新任で、既定の路線を知ったところで、色々問題があっても、下村大臣の時から既に決まっていたので、もうその線で行くよりないと思い発言したのであろうが、大臣には昨今益々酷くなっている社会の貧困格差に理解がなかったことが問題を引き起こすことになってしまった。

 これまでの案では、同じ受験生でも、都会の裕福な家庭の子弟と地方の貧しい子弟の間に、あまりにも大きな条件の格差があることがわかっていたのに、それを無視して強行しようとしていたところに問題があったところへの大臣の発言である。問題になるのは当然である。

 元々は、大学入試共通試験を利権の絡んだ民間業者に全面的に任せようとしたところに問題があるのである。百万人近くの全受験生が絡む事業なので、民間の教育関連業者にとっては願ってもないチャンスである。忽ち政府の要請に答えて、競って手を挙げることになり、始め2業者だったのが最終的に6業者となったそうで、それぞれの業者には全て政治家が絡んでいるのではと、安倍首相に近い評論家の田崎史郎(スシロー)でさえが言っている。

 英語のヒアリングの問題だけでなく、国語や数学の記述式問題についても、回答をすべて民間に任せることになっているが、複雑なので、その検討に参加した人の3割の人が正確に自己採点出来なかったとも言われている。

 民間に委託すると、たちまち受験業者や政治家が絡む利権がらみの事業になってしまうのである。すでに下村元文科大臣と業者との疑惑もささやかれている。大学入学試験は安易に民間に委託すべきでものでははない。

 もっと文科省が主体となって、関連する学校の先生や受験生の立場を考え、広く意見を聞いて実施すべきもので、複雑な問題には大学にも関与してもらえば良いわけで、平等であるべき大学入試の共通試験などを、商売の利権に結びつきやすい民間業者に委託するようなことははやるべきではないであろう。

 この際、一度全てご破算にして、各大学とも協議して、初めから時間をかけて慎重にに協議し直して再出発すべきであろう。