何回転んだことだろう

 歳をとってから時たま転倒するようになった。これまで何回転んだことだろう。自慢ではないが、もう10回は超えているのではなかろうか。いずれも、幸い大事には至らなかったが、いつかは転倒が元で、命をなくすことになるかも知れない。

 横断歩道などで転倒して、起き上がるより先に車が来て、交通事故になる可能性なども考えられる。しかし、転倒は自分で意識してするものではなく、また何か前兆があってから起こるわけでもない。思わぬ時に、突然起こるのだから、どうにも防ぎようがない。

 それでも、起こってしまったことは案外覚えているもので、散歩をしていて呉服橋の袂で突然倒れたのはもう大分前のこと、ロスアンゼルスの大聖堂の前庭でも倒れたし、循環器病研究センターからの帰途、北千里の駅前でもひっくり返った。更には雲雀丘の県道沿い、箕面の滝道、石橋近くの交差点横の駐車場などと次々に思い出されて来る。

 用心していたためか、しばらく転ばなかった時期もあったが、最近では、猪名川の土手に上がる手前、近江長浜の古い町の歩道、梅田阪急の出口などと続いている。

 以前にも書いたが、杖を持っていても転ぶもので、最近の長浜でも杖を持っていたし、阪急の出口の時も長い傘を持っていた。それに同じ転ぶにしても、近頃は以前と少し違っている。以前は転ぶ時に、自分でも転んで行くのが良く判りながら、まるでスローモーション画面を見ているような感じで、「あ・あ・・・」と思っている間に、どうにもならずに倒れてしまう感じであったが、最近の転倒の時には、突然起こって気が付いた時には、もうばったり倒れてしまっている感じで、途中の経過の記憶がないことである。  

 そのためかどうか、この阪急の時には、どう考えてもわからないのは、この時は手も足も打っていないのに、上唇の上の鼻下だけを打ったのか、僅かな傷があり、出血したが、鼻も打っていないし、メガネも無傷であった。鼻の突起を無視して鼻下だけを傷つけるなど、どういう転び方をしたのか、不思議でならない。

 転倒が多くなった原因は歳をとって平衡感覚が悪くなったためであろうか。片足立ちで調べてみると、開眼なら30秒ぐらいは出来ても、閉眼すると5秒と持たない。朝の体操の時に、毎日練習しているが、これは少しも良くならない。

 元来、せっかちで気が急いて、早く行こうと思い勝ちなのに、歳をとって体がついていけなくなっている矛盾が原因だろうとは推察はついているが、癖は歳をとっても、なかなか治らない。

 それでも最近は、階段を降りる時は怖いので、必ず手すりを持つようにしているし、道を渡る時などは、安全を確かめて、ゆっくり注意しながら歩くように気をつけている。転倒自体よりも、それによる事故や怪我が怖いので、最近は出来るだけ杖を持ち、出来るだけゆっくりと注意しながら歩くように心掛けている。