老人を働かせるコマーシャル

 テレビのコマーシャルを見ていると、ひどいものがあった。

 定年退職をした男性がベッドで寝ていると、娘が掃除機を持ってやってきて、「お父さん、またトロトロ寝ているの。起きなさいよ」と言ってたたき起こす。

 何のコマーシャルかと思ったら、急に画面が変わって、何処かの人材派遣会社の名前が出て、老人対象の警備員や他のパートタイマーの募集広告になった。

 若い時からよく働いて、年金もちゃんと払って、無事に定年を迎え、これからやっと楽が出来ると思っていたら、すっかり時代が変わってしまっていた。

 今や定年は延長され、それに合わせて、年金支給の開始も遅くなり、せっかく定年万歳と思っていたのに、ゆっくり出来るどころか、年寄りが鞭打たれて働かざるを得ない、年寄りいじめの時代になってしまった。

 若いうちからしっかり働き、年金もちゃんと払い、定年になれば、それで食べて、老後を好きなようにゆっくり過ごせる予定だったのに、すっかり当てが外れ、まるで詐欺にあったようなものである。

 定年までの期限つきで、老後の楽しみがあったればこそ、残業にもめげず、睡眠時間まで削って、夜まで会社のために働いてきたのに、少子化高齢化の時代になって老人が増えたし、その上近頃の年寄りは元気で定年を過ぎてもまだ働ける人が増えた。

 真面目に働いて来て、定年を迎えた者は言いたくなる。「働けるのだから年金開始は遅らしても良いだろうだって。約束が違うじゃないか。それに、一概に老人は元気だと言っても、皆がそうじゃないんだよ。若者と違って、老人は人によって皆違うのだ。」

「確かに昔より元気な老人が多くはなったが、現役の時に働き過ぎて体を壊した奴もいるし、そうでなくても、早く歳をとってしまった者も多い。これまで一生懸命働いたのだから、ここらでちょっとは楽させてくれよ。人生も残り少なくなって来たのだからさ。」と。

 テレビのコマーシャルはそんなことには耳も貸さずに、寝ている老人を無理やり引っ張り出して、働かせようとしているかのようである。人口減少で人手が足りない世の中、政府が遊んでいる老人や女に目をつけない訳が無い。足腰の弱ったヨボヨボの年寄りまで巻き添えを食うことになるのも必定である。

 老人よ。折角これまで社会のために貢献して来たのだから、せめて人生の最後を老身に鞭打って働くようようなことをしなくても、ゆっくり過ごして人生を終えられるように出来ないものかと主張しようではないか。

追伸:テレビで安倍首相が65歳を超えた老人の80%の人が働きたいと言っていると話していたが、大抵の老人はお金がないので働かなくては仕方がないと思っているのであって、出来ればゆっくり老後を楽しみたいと思っているということがわかっていないのである。