ニューヨーク公共図書館エクス・リブリス

 ドキュメンタリー映画の巨匠89歳のフレデリック・ワイズマンの「ニューヨーク公共図書館エクス・リブリス」という映画を見た。こんな図書館のドキュメンタリーで、しかも途中で休憩の入る205分の上映時間の映画では退屈するのではないかと思ったが、さすがにベテランの作品である。

 ニューヨーク、マンハッタンの5th.Ave.にあるこの世界最大級の「知の殿堂」とも言える図書館が、単なる書庫ではなく、人がよりよく生きようとする場所として色々な活動をしている様を丹念に教えてくれて、決して退屈させなかった。

 それどころか、日本の図書館の管理者や、府や市などの自治体の関係者にぜひ見て欲しいと思わせた。これだけ広い活動をしている図書館は日本にはないであろう。図書館が地域住民と共にあるべき真の姿を教えてくれるもので、日本でもぜひ参考にして、すぐには無理にしても、将来的に、地域の図書館が地域に住む人たちにとって、少しでもより有意義な場所にして貰えたらなと思った。

 設立主体は市か州かと思っていたが、そうではなくて、公民協働の図書館運営であり、予算獲得にも努力して公共の予算に寄付なども加えて運営し、あちこちに分館を設け、全部で92の図書館のネットワークとなっているそうである。

  ニューヨーク市民の生活に密着した存在であらんとして、これが図書館の仕事?と思われるような図書館という固定観念を打ち壊すような活動までしている様子が描き出されている。

 学びたい人や働きたい人のための多種多様な教育プログラムを用意し、情報の闇から脱出する手助けとして、老人や低所得者に対するパソコン教室や個人教育なども開き、デジタル革命への適応に努め、スマホの貸し出しのようなことまでしている。 

 その他にも、外国語の教室、障害者にための公共サービスの説明会 手話や音読など、それにダンス教室まで行われていた。

 勿論それより先に、著者を招いての読者との会話や、色々な問題についての講義や討論会なども行われているが、この映画で一番長い部分は、繰り返し出てくる図書館の中で話しているシーンであり、主に予算獲得のための幹部の運営協議会のようなもので、公民協働の組織であるだけに、非常な努力が払われていることがわかる。

 勿論、 内部の図書の管理や、機械的な本の整理や処理の現場なども含め、STAFF ONLYの舞台裏での司書やボランティアの活動も見せてくれる。また、ニューヨ−クなだけに、図書館を訪れるホームレスへの対応の議論まで出ていた。  

 結局、 公共とは何か、民主主義とは何かという考えが運営の基本にあり、それが

この図書館を世界で最も有名のものとしている理由であろうが、同時に未来の図書館のあり方をサジェストしてくれているように思われる。

 図書館に関係している人や府や市の公共に関わる人達はぜひ見て欲しい。日本の図書館もいつの日にか、このような誰にとっても役にたつ地域の知的なセンターになって欲しいものである。