映画「禁じられた遊び」

 戦後まだそれ程も経っていない1952年のフランス映画「禁じられた遊び」を近くの映画館で上映するのを知って見に行った。まだ戦後の空気がまだ濃厚な時に見て、忘れがたい映画の一つだったので是非もう一度見たいと思った。

 映画はその時一回しか見ていないが、ギターの伴奏曲が「愛のロマンス」とか言って広く流行したので、映画のストーリーの詳細は時とともに薄らいでも、曲の方は後々まであちこちで聴く機会があり、その度に映画に出てきた子役の演技やその情景を思い出したりして来たのだった。

 今回、久しぶりで映画に再会して、改めて良い映画だったのだなあと感心させられた。監督のルネ・クレマンの名前も久しぶりで懐かしかったし、映画の内容も朧げな印象のみとなり、ストーリーなど殆ど忘れかけていたので、場面、場面を思い出しては感動した。

 見に来ている人はやはり高齢者が多かったが、それでもこの映画が初めて封切られた時に見た人は少ないのではなかろうか。私などは映画を見ているうちに、いつしか戦後の時代に戻って見ているような感じさえしていたが、その頃と今初めて見るのでは、同じ映画を見ても感じ取り方はどうしても違ってくるのではなかろうか。

 改めて見ても、やはり優れた映画である。涙なしには見れない。ルネクレマンの演出も卓越しているが、両親を亡くし、戦争孤児となった5歳の女の子の演技、表情の変化が何と言っても素晴らしい。

 孤児になった少女が、偶然出会ったミッシェルという少年の家に一緒に住み、死んだ愛犬を埋めてやることがきっかけとなって、子供達二人でこっそりとヒヨコやモグラや虫などの墓を次々に作り、それらを弔うために墓地や教会の十字架を盗んで動物たちの墓に立ててやるというストーリーである。「禁じられた遊び」という表題の所以である。

 やがて少女が少年や家族と引き離されて、赤十字に引き取られることになるが、引き取られて群衆の中で待たされている間に、少年と同じミッシェルという名前を聞いて、「ミッシェル、ミッシェル」と呼びながら少女が少年を求めて群衆の中に消えて行くところでFINとなる哀愁のフィナーレも素晴らしい。

 それにこの映画の制作時に、予算がなくてオーケストラが組めないために、ギター一本の伴奏になったものらしいが、その今では聞き慣れた「愛のロマンス」の曲がまた良く映像に合っていて、映画の印象を一層強めているのも特徴であろう。

 再度見ても、やはり戦争の悲惨さ、残虐さを間接的に強く訴える反戦映画の傑作と言えるであろう。やはりこういう悲劇を二度と繰り返さないように、こういう映画がいつまでも人類の良識に訴え続けて欲しいものである。