奄美大島

 二泊三日で奄美大島へ行って来ました。伊丹から二時間足らずで奄美空港に到着します。ツアーだったので、空港を出たらすぐ大型の観光バスが待っていました。一瞬、こんな島で、こんな大きなバスで、大丈夫なのだろうかと思いましたが、大島と言う名がついているぐらいで、思ったよりずっと大きな島でした。南北間の距離は100キロ位もあるそうです。日本の離島では佐渡島に次いで大きく「淡路島を琵琶湖に沈めて、奄美大島で蓋をすると丁度良いぐらいの大きさだ」とガイドさんが教えてくれました。

 南国だけあって、流石に大阪より暖かく、ずっと西になりますので夜明けが遅く、7時過ぎまで真っ暗でした。冬でも暖かいので、正月に桜が咲いて、その後、梅が咲き、今はツツジが満開ということで、一年中花が咲いているそうです。ススキは枯れる間がないそうです。その代わり、秋の紅葉や落葉が見られず、山は一年中いつも緑に覆われている由です。

 木の種類も本州などとは少し違い、ソテツやシダの系統が多く、ガジュマルの森やアダン、もちの木などといった熱帯系の植生が多く見られます。またパイナプルに似たアダンの実をよく見ましたし、巨大なマメ科のモダマの自生している所へも案内されました。マングローブの林をカヌーで下れる所もありました。

 また、道端でひめハブを見つけましたが、猛毒のハブや耳の短い黒うさぎ、姿は美しいが鳴き声は感心出来ないルリカケスなどといった奄美特有の動物や鳥も見られるようです。

  かって琉球王国支配下にあった歴史からも想像されるように、言葉や風俗にも本州とは多少違った固有の文化が見られるのも、興味深いところです。「いらしゃい」という挨拶が、沖縄では「メンソーレ」で奄美では「イソーレ」ということなど、端的に奄美の位置を示しているようです。 

 もう一つ、何よりも素晴らしい奄美の自然は海の色です。汚されていないだけでなく、海底の地質の違いや、本州のように大きな海藻がないことなども関係しているのか、本州では絶対見られない美しいブルーの色から深緑、緑と、思わず綺麗だなと感嘆の声をあげたくなるような海の色をしています。見方によっては三色にも五色にも見えるようです。

 それに海岸線が概ねサンゴ礁に囲まれているので、岸辺をかなり離れた海の中に白波の線が引かれることになり、引潮の時にはそこらまで歩いて行けるようで、そこで潮干狩りなどが出来るそうです。島の南部の古仁屋港からグラスボートに乗ってサンゴ礁見物にも行きましたが、大小の魚が色々な形のサンゴ礁の周辺に集まっているのを観察することが出来ました。

 小さな島ですが、雨量が多いためか、山岳地帯にはいくつかの滝も観光コースに組み入れられており、北の方には、何万年前かに隕石が落下して出来た巨大なクレータの湾があり、その時巻き上げられた土砂によって、かって別の島だった最北部がくっついて、大島に取り込まれたのだそうです。

 二日目の夜には、そのクレータ湾の岬の先にあるプチホテルに泊まったのですが、ロケーションは抜群で、見渡す限り、270度が海で、エメラルド色の海に囲まれ、青い海と白い砂浜、岩礁の間にソテツのような大きな団扇のような葉をした植物が聳え、そのむこうから朝日が上る景色は思わず感嘆の声が出ずには済まないものでした。山のご来光も良いものですが、海と雲と日の出の組み合わせもそれに劣らないものです。

 最後の訪れたのが、田中一村の美術館でした。こここそが、そもそも奄美大島の旅行に参加した一番の動機だったのですが、期待に外れず、大作は30数点しかない、一村の奄美大島での作品の何点かの実物を見ることが出来、旅の目的を果たしたような気がしました。

 実際の風景を経験した上で作品を見ると、成る程こういう景色や植物、鳥などの世界に魅せられて、こういう描き方をしたのだなと言うことが感じられて、作品が一層身短に感じられたと言えるでしょう。美術館の周辺に、一村の絵の対象となった植物を集め、「一村の杜」という散歩道が拵えられていましたが、美術館の高床式のユニークな建物のととも、美術館の価値を一層高めているようでした。忘れがたい旅の思い出ともなりました。

 奄美大島は九州と沖縄の中間地点になりますが、いずれとも異なったユ二ークで魅力的な風物があり、機会があれば、また訪れてもよい所だというのが私の印象です。