スポーツ界の古い体質

 アマチュアボクシング界に君臨していた山根会長に対する会員の反旗が上がり、山根会長が辞任したが、この人は暴力団とも関係もあり、会員からの除名の要求に対してもどうするのか危ぶまれたが、結局は辞任ということで落着したようである。

 このアマチュアボクシングの問題の前には、しばらくマスコミに騒がれた日大アメリカンフットボールの監督の指示による不当なタックル問題があり、これも責任者が辞任に追い込まれた事件があったが、大学の責任などなお曖昧な点を残したままである。

 最近のスポーツ界にはその他にも、オリンピックの日本レスリングや 同じく日大のチアリーダ部のパワハラ問題が報道され、それを追うようにオリンピックの体操でもパワハラ問題が報道されたと思えば、今度は剣道界の不祥事が明るみに出るなど、スポーツ界の不祥事が次から次へと絶えない。

 スポーツ界の一角を担うと言ってもよい相撲の世界でも、昔からしばしば暴力事件が問題になってきたし、学校レベルでのスポーツ関連でも、桜宮高校のバスケット部での暴力、自殺事件があったし、高校の体育部などでの暴力行為などは昔から時々話題になってきている。

 これらのことを見て来ると、日本の体育、スポーツ関係の世界には、何か共通した古い暴力に結びつき易いような体質が、未だに執拗にに残っていると考えた方がよさそうである。戦争中までに築き上げられた軍隊組織に似た集団主義、絶対服従の上下関係、滅私奉公、一致団結などと言った精神主義が残っているようである。

 学校の体育などでも罰則が多く、罰として校庭を何周か走らせるとか、兎飛びを何回かさせるとかいう、意味にわからない強制が平然と行われたり、絶対服従精神主義のようなものが先輩から後輩へと伝統のように受け継がれてきている。

 科学的な訓練法を取り入れながらも、指導者がいまだに精神主義を押し付ける体制が全体を支配し、それを肯定する雰囲気が断ち切れないでいるようである。時々問題となる事件や事例はそれが顔をもたげて露わになったものだとこらえるべきであろう。この国ではさらに産業界でのこう言った集団主義精神主義の尊重がこの傾向をより助長してきた面も強い。

  二年後のオリンピックが必要以上に騒がれているので、スポーツ界のトラブルも多く表面に出てきているのかも知れないが、今こそ体育系の体質を従来からの軍隊式、精神主義的訓練法から民主的個人的な科学的訓練法に変える絶好のチャンスであり、日本の体育やスポーツ界、引いては国民の皆が楽しめる健康やレジャーとしての体育やスポーツの発展につながるようにすべきであろう。

 東京オリンピックを控え、日本のスポーツ界が大きな流れを変えて生まれ変わるべき時ではなかろうか。