大阪北部地震

 先日来テレビなどで千葉とか茨城で地震があったと聞いて、やっぱり関東の方は地震が多いのだなあと人ごとのように感じていたら、一昨日の朝、書斎でパソコンを見ていると、突然強い振動に体が上下に突き動かされて、棚のものが落ちたりしてびっくりした。とっさに地震だと思って身構えたが、上下に揺られるような振動は長くは続かず収まったが、階下の居間にいた女房は庭に飛び出したようだった。

 すぐにあの阪神淡路大震災のことが思い出されたが、当然こちらでも地震はこれまでもいくらでもあるのである。それでも大した地震でもなくてよかったじゃないか、震度でいえば4か5ぐらいかなと思った。午後に出かける用事があったが、これならその頃にはもう普通に行けるのでないかと思った。

 すぐにテレビをつけたが、南海大地震のようなものではないらしく、震源地は北摂のようで、池田を含むあたりに大きな印がつけられているので、震源でこれくらいなら大したこともあるまい。ただちょうど朝の出勤時間である。電車が止まったり、エレベーターに閉じ込められたり大変な目に合う人が出るだろうなと予測が出来た。

 テレビによると交通機関は全て止まったようである。ヘリコプターによる空からの中継があり見ていると、茨木や高槻あたりが最も揺れもひどかったようで、屋根瓦がずれているような状況が写し出されていた。それでも火災の煙などは見えず、被害の状況はわからなかった。

 しかしそのうちに、小学校のプールの横のブロック塀が道路に倒れているのや、東淀川区の家の塀の石積みが道路に転がっている様子などが映し出され、小学4年の女の子が塀にはさまれて救急搬送されたが心肺停止だとか、子供の通学の見守りに出てきた老人が倒れた塀の下敷きになって死亡、どこやらでは倒れた本棚に押しつぶされて死亡などといったニュースが入ってきて、想像以上にひどかったことが示された。そうすると私の感じ方は歳をとって恐怖に対する感度も鈍くなってしまっていたので、あまり強く感じなかったのかも知れない。

 テレビ画面の北摂あたりの断層図を見ると、池田は淡路島から六甲山系を経て高槻あたりに繋がる断層と、上町台地から北へ伸びる断層がぶつかるあたりに位置しているのがわかる。それは既に阪神大震災の時に知らされたし、能勢の群発地震が執拗に続いたこともあった。今回はこれぐらいで済んで良かったと思わなければいけないのかも知れない。むしろ解説者の言うように今後また起こることを考えておくべきなのであろう。

 非常用の電気やラジオ、水などは一応用意しているが、ヘルメットは今あるのが少し小さすぎるので買い換えた方が良いのではないか、非常食も備えておいた方がよくはないか。でも、今は皆が殺到しているだろうから、もう少し落ち着くまで待った方が賢明ではないか、などといろいろな考えが頭を廻る。

 ただ、こういう非常用品は揃えても何も起こらないと、やがて古くなって絶えず入れ替えるのは難しいし、生活の邪魔になってどこかに押しやられてしまうことになりがちである。それに自分の年を考えれば、せっかく揃えても、それが役に立つ公算は少ない。それより先にこちらの命がなくなるのでは?などといった思いも頭に上がってくる。

 結局、非常用として阪神大震災の後で作った非常用のリュック一式を、もう古くなった非常用の水のボトルと一緒に玄関に出しただけで、しばらく様子を見ることにした。

 そのうちにあちこちから安否を尋ねる電話があったりしたが、今は便利になったもので、インターネットでもSafariに安否を自己申告する欄が出てきて、それに無事を知らせると、たちまちアメリカやインドなどからも連絡があったし、高槻やその他あちこちの人の安否もすぐに掴めた。今度のようの軽く済んだ時は良いが、今後、大きな災害が起こった時などにはきっと便利で役に立つことだろうと思われた。

 仕事に出た人は社内に長らく閉じ込められたり、帰宅も出来なくて大変だったようだが、幸い私の身の回りでは大きな被害もなく、今のところ大したこともなく済んだが、何と言っても残念で心残りなのは学校のプールのブロック塀の下敷きになって亡くなった小学4年生の女の子のことである。

 テレビの画像を見ると倒れたプールサイドのブロック塀の外側の道路面には大きな絵が描かれており、それに沿ってはっきりと色分けされた通学路の緑の歩道が通っている。小学校らしい特徴的な眺めなので、Googleの地図の写真にもはっきり写っているそうである。

 なくなった子は忠実に安全な緑の通学路を通って学校のプールの横を経て、もう少しで校門をくぐるところだったのだろう。その時思いもかけず突然横の高い所からブロック塀が倒れて来てその下敷きになってしまったようである。本当に運の悪い悲しい出来事である。

 ブロック塀は地震の時には危ないから避けて通るようにとは以前にも聞かされたことであるが、地震は思わぬ時に突然起こるものであるし、平素はその危険性に誰も関心を払っていなかったのであろう。後から見れば建築基準法からいって、違法建築だったらしいが、学校の建築に関する定期検査の時にも問題にされたことはなかったようである。

 学校ではプールの目隠しにブロック塀を設けたもので、学校だからといって外壁に大きな絵も描いたのであろう。しかし、プールを利用するために邪魔になるブロック塀の支え壁は作らなかったのであろう。プールの中の安全については当然色々考え、実行されていたのであろうが、外壁のブロックの安全性についてまでは誰もは考えてみもしなかったのではなかろうか。

 建築の定期検査があっても建物のついては調べても、ブロック塀についてまでは調べていなかったようである。済んでしまったことは今更どうしようもないが、小学校の女の子が学校へ行って、学校の塀に押しつぶされて死ぬなどといった出来事ほど悲しいことはない。今後はこの悲しみを忘れることなく、学校の安全については目の届かない所のないように出来るだけ多くの関係者が皆で目を光らせて、二度とこのようなことが起きないようにしていただきたいものである。

 ブロック塀は危ないものである。繰り返しになるが、学校の安全には平素からくれぐれも注意してほしいものである。亡くなられた可憐な女の子のご冥福を祈ってやまない。