日本はやはりアメリカの従属国

 アメリカのトランプ大統領北朝鮮金正恩委員長の会談がシンガポールで行われた。首脳会談というものは一種の政治ショウのようなもので、アメリカが北朝鮮の体制保証をし、北朝鮮朝鮮半島の非核化を約束したということで、具体的なことはまだ何も決まっていないので、今後どうなっていくかわからないが、まずは大筋の合意が出来て朝鮮半島が平和に向かい始めたことは本当に喜ばしいことである。

 ただ、このニュースなどを見聞きしていて感じさせられたのは、日本の報道が具体的なことが決まっていないことを取り上げて、成果を出来るだけ低く評価しようとしていることである。どうも日本はこの地域が平和になって、アメリカの勢力が弱くなることを恐れ、また日本が話し合いの蚊帳の外におかれることを懸念しているようである。この国はやはり完全な独立国ではなく、今だにアメリカの従属国である悲哀を感じざるを得ない。

 北朝鮮が核やミサイルの開発を進め、アメリカが最大限の圧力をかけると言っていた時には、安倍首相はそれに乗って先頭に立って「最大限の圧力を」と叫び続けており、アメリカが一時会談を中止すると言った時には、他の国が心配して何とか会談に漕ぎ着けようとしたのに、日本だけがそれ見たことかと言わんばかりに、早速会談中止を支持し「最大限の圧力を」と繰り返したことが日本の姿勢を端的に表しているようである。

 ところが、その後トランプ大統領が交渉を成功させようと考え直し、「もう最大限の圧力という言葉は使わないでおこう」と言い出すと一人浮き上がってしまったことになってしまった。この米朝会談の流れには韓国はもちろんだが、中国も関与しており、事前に金主席は二度も中国を訪問しているし、シンガポールへの飛行機も提供している。ロシアも絡んでいるようだが、日本だけが蚊帳の外へ置かれかねない。

 そんなこともあって、安倍首相がトランプ大統領に頼んだのが北朝鮮による日本人の拉致問題である。本来拉致の問題は日本と北朝鮮の2ケ國間の問題であり、この会議の中心的な課題ではない。拉致問題を絡ませて何とか日本もこの流れの一翼に乗せてもらおうとしたのであろう。

 拉致被害者の家族たちにしてみれば、これまでどれだけ政府に頼んでもラチがあかなかったので、もう日本政府はあてにならないと困り果てていたところなので、今回トランプ大統領金正恩委員長に会うのであれば、この機会にぜひ大統領に頼んでなんとかしてもらおう、もうこれが最後の機会だと悲壮な覚悟だったのであろう。拉致被害者の家族からすれば、もうトランプ大統領にしか頼るところがないのである。

 日本政府はこれまで拉致被害者の家族の痛切な願いを無視して、真剣に連れ戻す試みをせず、長期に渡って殆ど直接交渉をないがしろにして無駄に時間を空費したまま、拉致問題を政治的にのみ利用してきたのである。今回も、またもや自分たちの努力を後回しにして、トランプ大統領拉致問題を訴え、政治的に利用しようとしているのである。最早手遅れの感がないでもないが、政府は当事者でない米国に頼むよりも、一刻も早く北朝鮮と直接交渉して拉致問題を解決すべきである。

 米朝首脳会談に関する一般の人々の感想や意見を見聞きしても、最近の次第に緊張を高めてきている周辺世界の不安の中で、最大限の圧力ばかりを唱えてきた政府には最早この問題の解決の力がないことを知り、日本政府はあてにならず「トランプさんならやってくれるのではないか」と期待している声が聞こえてくる。自国の政府ではあてにならず、親分のアメリカ政府に頼らねば解決出来ないのではないかというのも情けないことであるが、やはりこの国は今だにアメリカの属国なのである。