「橋本惠史のお愉しみ会」

 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールであった「橋本惠史のお愉しみ会」

というのに行ってきた。私が以前にある病院で一緒に勤務したことのある後輩の先生の息子さんが橋本惠史その人であり、案内をいただいたので、女房と一緒に出かけたのだった。

 大阪芸大を出たテノール歌手だということは聞いていたが、それ以上のことは何も知らなかったので、正直なところ、行くまでは、まだ社会的に名も売れていない個人の会で2000名も入る大ホールが果たして埋まるものだろうかとか、一体こんな広い会場で個人がどんなパーフォーマンスをするのだろうかなどと気になっていた。

 ところが心配は無用であった。数年前からはじめは300人ぐらいのところから始まり、今回が6回目ということで、広い会場もほぼ満席。催し物も、歌に踊りは言うまでもなく、40〜50人にも及ぶ共演者とともに次々と出し物が続き、本格的なメンバーを揃えたオーケストラから、小劇、おまけに本人の落語まであるという盛り沢山なスケジュールで、観客の反応も良く大成功であった。

 本人は初めから終わりまで、何度も衣装を変えての出演で大変だっただろうと思われるが、なかなか多能な人で、本業とも言える声楽だけでなく、劇の構成、アレンジなどもされるようだし、桂文枝に弟子入りして「歌曲亭文十弁」(ブントーベン)の名まで貰ったという落語も本格的なものである。

 それだけでも立派だと思われたが、まだ若い人なのにこれだけの共演者を集め、これだけ大きな催し物をオーガナイズする能力の素晴らしいさ、ちゃっかり多くの企業などのスポンサーもつけ、しかもこの催しがカンボジャに中学校を立て、音楽教育に貢献するるためのチャリティコンサートになっていると聞いては驚かないではおれなかった。

 世の中の高齢化が進み、経済は停滞し、人々の暮らしも景気も一向に良くならず、森友学園加計学園問題などをめぐる政治の混乱などで、あまり明るい展望が開けない世の中では、老人の気分も沈滞しがちとなるが、この催しに本人を始め、若い共演者たちの熱気に溢れた演技を見て、若者たちのエネルギーを感じさせられ、未来への期待も湧いてくるような気さえした。

 チャリティーの目的であるカンボジャの中学校が1日でも早く完成するのを願うとともに、この若者たちのエネルギーがますます発展して明るい未来が開けることを願わないではおれなかった。

 序でに、一つ付け加えたく思ったことは、戦争も縁遠くなった若者なのに、どうして

劇中に特攻隊やビルマの縦琴が出てくるのか、少し不思議な気がしたが、お父さんの影響でもあるのであろうか。私たちの戦争経験者からすれば、何らかの形で無残だった時代のこともいつまでも語り継いで行って生かして貰いたいものである。