核の小型化は核戦争につながる

 2月4日の朝日新聞の朝刊を見て驚いた。一面のトップ記事に大きく『米、「使える核」開発明記 新戦略「核なき世界」放棄』とあり、それに続く記事には『トランプ米政権は2日、中期的な核政策の指針である「核戦略見直し」(NPR)を発表し、オバマ前政権が目指した「核なき世界」の理想を事実上放棄した。非核攻撃への報復にも核を使うことがあり得ると明示した他、核兵器を本当に「使う」と敵国に思わせるため爆発力を抑えた小型核兵器の開発も明記。冷戦後から米ロが続けてきた核軍縮の流れに逆行する新方針となった』と書かれている。

 広島、長崎の被害を教訓として、折角これまで世界中で核軍縮を進め、曲がりなりにも国連で核拡散防止条約(NPT)が出来、オバマ大統領の核なき世界への訴えもあり、昨年には核兵器禁止条約も採択されたというのに、ここへ来て、アメリカが真っ向から核兵器使用を言い出したことは、これまでの先人たちの努力を否定し、力で世界の人々の願いを踏みにじろうとするものである。米国主導でイランや北朝鮮の核開発に対して国連あげての経済制裁をしているのに、制裁している側の米国が新規の核開発を始めるのも加盟国の希望を覆す方針でもある。

 米国の言い分は「過去10年間、米国が核兵器の役割と数量を減らそうと努力して来たが、他の核保有国は数量を増大させ、安全保障上の脅威が高まっており、世界は「かってのように大国間の競争に戻った」と云うことらしい。

 しかもそれに対して、情けないことに、核廃絶の国民の切なる願いにも逆らって、日本政府はこの米国の「核戦略見直し」が同盟国の安全確保に対する米国の関与強化を強調したとして「高く評価」との外相談話を出しているしているのである。これは米国のご機嫌を伺って国連で採択された核兵器禁止条約に加わらなかったと云うような話ではない。人類を滅亡させかねない米国の核戦争に加担することを表明したことになる。

 現在の核弾頭保有数を見ても、圧倒的多数を保有しているのは米国とロシアだけであり、第二次世界大戦後にほとんど切れ目なく世界のどこかで戦争をしてきた国は唯一米国なのである。小型で利用しやすくなった核兵器が現実に使われる可能性がいかに高くなったか容易に想像できる。

 今回米国が言うように小型で「使いやすい」新型核兵器が開発され、水上艦や潜水艦から発射されたり、通常兵器やサイバー攻撃などを受けた場合にも核兵器で報復する可能性も排除しないと言うのであるから、通常兵器と核兵器の区別が曖昧になって、将来必ず何らかの戦闘においてそれらの小型核兵器が使用されることは避けられないことになったとも言えるであろう。

 想像するだけでも恐ろしいことである。人類の滅亡さえ窺えることにもなりかねない。核兵器が招く破滅への想像力を欠き、武力で自国の優越感を満たそうとするトランプ大統領の姿勢や、それに全面的に同調する安倍内閣の姿勢は、人類にとっての最大の懸念材料である。未来の人類の生存や幸福のためにも、何としてでも世界の多くの人たちが力を合わせてこの暴挙を防がなければならないであろう。