九州の水害の写真を見て

 先日の九州の豪雨による水害の写真を見て驚いたのは、河川の増水や決壊による被害には大量の木材が流れてきて、それが川をせき止め、家屋を押しつぶしたりするのに大きな役割を果たしているように見えることであった。

 これまでも何処かの川が氾濫したり、山崩れがあったりして道路が寸断されたり、家屋が押し流されたりした写真は新聞やテレビで屡々見さされてきたが、今度のように大量の木材が洪水と一緒に流されてきて、家屋などを押しつぶしているのを見るのは初めてではないだろうか。押し寄せてきた大量の木材はそれを取り除くだけでも、大変なように見受けられた。

 写真お見ると、木材はその多くがかって植林された、おそらく大部分が杉であろうと思われる真っ直ぐな木ばかりのようで、大量の水に押し流され、激流に流される間にお互いに擦り合わされたり、川底や石や岩にぶつかって表皮を剥がされ、まるで製材のために処理されたかのような新鮮な肌を見せているのが特徴のように見受けられた。

 こんな姿はこれまでの多くの災害の写真ではあまり見たことがなかったように思う。恐らく、かって植林され、管理され整備されていた森林が、近年の林業の衰退や人手不足のために放置され、荒れるに任されていることと関係があるのではなかろうかと思わざるを得なかった。

 詳しいことがわからないので本当の原因はわからないが、こんな新しい災害の現場の写真も、単に表面に現れた災害の様子を知らせるだけではなく、その下にある人々の社会的な営みの変化に伴う自然の変化、山林の放棄による山林の荒廃の結果をあらわに見せたくれたような気がしてならなかった。