憲法99条

 日本国憲法99条には「天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」とはっきり書かれている。

 それにもかかわらず、安倍首相は具体的に憲法9条自衛隊の存在を書き加え、2020年には新しい憲法にしたいと述べて問題になっている。

 憲法の条文の解説によると「憲法違反行為を予防し、これに抵抗する義務を課したもの」で、この規定は「内閣が、憲法を批判し、憲法を検討して、そして憲法を変えるような提案をすることを禁止している」とする見解である。

 ただ、公務員は職務を遂行するにあたり、憲法に問題点があると認識した場合にその問題点を広く国民に問いかけることを禁止しているわけではないとする見解もあるとされている。そうでなくとも、 総理大臣だからといって、もちろん憲法の具合が悪い点を変えたらどうかと思うのは自由である。

 しかし、総理大臣の執務室で、上記の様なことを言って、憲法改正の旗を振るのは憲法を尊重し擁護する国務大臣の義務に違反すると言わねばならないだろう。

    妻公私 夫総裁 使い分け   福島県 伊藤蘭

 これは朝日新聞に載った投稿川柳であるが、誰しも思う様に、いくら憲法遵守の義務のある首相と、自民党という政党の総裁を使い分けても、同一の人間である。首相にしても総裁にしても責任はその人間全体として負うものであり、個人を分けることは出来ない。同一人が片方で憲法を尊重し擁護しながら、他方で憲法の悪口を言い、その改正を期限まで示して具体的に進めようとするのは、二重人格も良いところで、明らかに憲法違反と言えるのではなかろうか。

 首相と総裁を分けるのはあくまで便宜的なもので、同じ人間が立場の違いを口実にして相反することを公言し、実行しようとすることは責任ある人間として許されることではない。

    同じ人首相と総裁使い分け憲法違反も堂々と

 憲法を改正するかどうかは公務員でない一般国民から上がってくる声を聞いて、その委託に答える代議士などがどうすべきかを考え、その上で国会の審議にかけるべきもので、公務員である政府、ましてや首相が率先して憲法改正を発議したり提案すべきものではない。

 あまりにも堂々と、憲法を護るべき総理大臣が当然のごとく憲法の悪口を言い、自分に都合の良い様に憲法を変えようとする国の未来を案じるのは私だけではあるまい。