「共謀罪」法成立

 とうとう「共謀罪」法が成立した。正しくは「改正組織的犯罪処罰法」というそうだが、組織的な犯罪を準備段階から取り締まれるようにするもので、犯罪が起こる以前の準備段階で逮捕取り締まりを可能にするものである。

 このテロ等準備処罰法は国際的なパレルモ条約の批准のために必要だとか、テロ対策に必要で、これがないと東京オリンピックが開けないなどと政府は言うが、パレルモ条約はテロを対象としたものではなく、テロのための条文は政府の言う227の犯罪には含まれておらず、一般国民には関係がない法案だなどというが、犯罪の準備段階で取り締まることができる点では権力が人々の思想心情といった人の内面にまで踏み込むことを可能にする法案で、戦前の治安維持法に類似するものである。

 SNSなどでは、政府の宣伝に乗せられて、普通に暮らしている人には関係のないもので、テロ対策に役立つのなら良いのではないかとの意見もあるが、憲法が保障する基本的人権を踏みにじることを可能にするもので、社会のあり方が大きく影響される結果になることは間違いないであろう。

 戦後75年も経てば治安維持法の恐ろしさもすでに忘却の彼方にあるのであろうか。治安維持法も初めは今回と同じように共産党対策であり、一般国民とは関係がないと言われて成立したが、一旦成立すると、法律はどんどん拡大解釈され、監視社会となり、密告などもはやり、やがては政府に反対するものは全て検挙の対象となり、平々凡々と暮らしていた人までが逮捕される暗黒の時代になったことを忘れてはならない。

 法律は生き物であり、必ずや抜け道や恣意的な拡大解釈が行われるようになるもので、この共謀罪法も初めは慎重であっても、やがて政府の都合の良いように拡大解釈され、戦前並みの時代がやってくるであろうことは必然的と言っても良いであろう。

 今後安倍内閣憲法を改正し、軍事力を行使出来るようにするときの抵抗を抑えるための布石であり、これまでに米国の指示により進められてきた秘密保護法や安保関連法などに続いて、一層民主主義を裏切り、独裁政治を進め、戦争への道を推し進めるための一環である。これも米国の利益が背景にあるようで、スノーデン氏の警告によれば、日本の警察が市民を監視して得た情報を入手するため、すでにそのための技術システムを米国が日本に提供済みだということにも関係しているらしい。

 この法案が成立したら、本気で国外へ逃亡しなければならなくなるかもと言っていた人さえあるが、次第に戦前のような監視社会となり、物の言えない住みにくい暗い社会になっていくのではなかろうか。今後これらの法律がどのように運営されていくかにもよるが、いよいよ引き返しの効かない「右傾化」のターニングポイントを過ぎようとしているのではないかという気がしてならない。