戦後からまた戦前へ

 戦後アメリカの属国になったとは言え、平和憲法のお蔭もあって折角七十年も平和が続いて来たのに、最近の世相を見ていると、また次第に戦前の世の中に似て来ているようである。

 安倍内閣になってからこの傾向はますます強くなり、秘密保護法や安保関連法案で憲法解釈を変えてまで自衛隊を米軍の補完部隊として海外へ派遣することもできるようにし、それに続いて今度はテロ準備罪などと称して共謀罪を作り、人々の内面にまで踏み込んで捜査の出来る、まさに戦前の治安維持法の現代版とでもいうべき悪法をこしらえようとしている。国民を監視して反対勢力を取り締まるのが目的で、いよいよ政府の憲法遵守、擁護義務に逆らって、平和憲法まで改正して公然と戦争のできる国にしようとしている。

 その上、国会などでの最近の政府の対応を見ていると、もはや民主主義の国とは思えないような政府の姿勢が浮き彫りになる。森友学園加計学園問題その他の次々に起こる疑惑にはまともに答えようとせず、共謀罪の法案など十分な討議もなく、法務大臣の確固とした答弁も出来ないまま強行採決するなど、これまでにない常軌を逸した独裁政権並みの強行ぶりである。

 以前から言う様に戦争は突然始まるものではない。戦争ができる様に一段一段と準備を積み上げていって、ある点を過ぎると最早引き返し得ない点となり、それを過ぎると最後には否でも応でも戦争に突入しなければならない羽目にまでなり、戦争に突入することになるのである。先の大日本帝国に歩んだ道がこれであった。

 今のまま進めば確実に再び戦争から破滅への道に進むことになるであろう。それもそろそろ引き返しに聞かない所まで来ているような気がする。しかも、今回は大日本帝国の時代と決定的に違っている点のあることにも注意すべきであろう。

 大日本帝国は善かれ悪しかれ独立国であったが、今はそうではないことである。今の日本国はアメリカの衛星国であり、属国である。日本の自衛隊は独自では動けない。アメリカの意向により、「アメリカと緊密な連携をとって」アメリカの指揮下でなければ戦うこともできないのである。

 と言うことは、逆にアメリカに要請されれば、意思に反してでも戦わねばならない事態も生じうることを覚悟しなければならない。アメリカはアメリカの利害関係によって動くものであり、日米同盟はあくまでアメリカファーストであることも知っておくべきである。

 必然的に自衛隊は国民を守るものではなく、アメリカのために働き、それに忠実な日本政府のために働くものであることを忘れてはならない。アメリカ追随の独裁政権が嫌でも国民を巻き込んでどのような運命を辿るのか、今や重大な分岐点に来ているような気がしてならない。

 かって辿った大日本帝国時代の侵略戦争や国民の苦しみ、その悲惨な結末を経験して来ただけに、今の政権の望む未来が国民にとっていかに危険なものであるかということを理解し、力を合わせて何とか再度の破滅を避けたいものだと願わざるを得ない。。