アジアを代表するのは誰?

 朝日新聞のザ・コラムに吉岡圭子編集委員の表題の記事が載っていた。アジアインフラ投資銀行(AIIB)やアジア開発銀行(ADB)についてのものであったが、表題を見て遠い昔、戦後間もない頃に、アメリカからの論評として当時在米の中国人作家、林語堂が何かの雑誌に同じような表題について論じていたのを思い出した。

 もう七十年も前のことなので内容は覚えていないが、日本の敗戦後間もない頃、アメリカが戦後のアジアに進出するのに、日本か、中国かどちらを基軸に考えるべきかについての選択に関するものであった。

 日本は敗戦で国土も荒廃してしまっていたが、アジアではそれまでの覇権国で、発展段階も他のアジアの国より進んでいたし、占領によって自由に操作できるので利用しやすいが、一方中国は同盟国であったし、何と言ってもアジアでは国土も人口も飛び抜けて大きい中心になる国なので、ここを拠点にする選択肢も強かったのであろう。

 中国を中心に考える場合、当時の中国はまだ蒋介石が支配していたので、日本から残っている工場設備などを中国に移して日本を二度と立ち上がれないようにするとともに、中国を盛り立てていくのが良いのではないかという計画が真剣に考えられていたようであった。

 ところが、中国の内戦で国民政府が負け、中華人民共和国が成立し、さらに朝鮮戦争が始まって有無を言わせず、アメリカは占領政策を急遽大幅に変更して日本を基地として使わざるを得なくなり、日本はそれに乗っかって、好機とばかりに産業復興の足がかりにしたので、日本か中国かの選択は消えてしまい、その後の歴史の繋がったわけである。

  その後は歴史の教えるとおり、朝鮮戦争ヴェトナム戦争の基地を利用した特需で日本は経済復興を遂げ、アメリカの従属国でありながら一頃はJAPAN AS  NUMBER ONEと言われるまでに経済成長を遂げたが、ピークを超えた後、ここ二十年ばかりは経済も停滞し、その間に遅れた中国の発展が素晴らしくなり、いつのまにか規模でもすでに日本を凌駕し、世界第二の経済大国になっている。

 こういう経過を経てADBと AIIBの問題なども起こってきているのである。歴史は後戻りはできない。アメリカの凋落も次第に隠せなくなっており、アメリカでさえ中国との均衡を図っていこうとしている。アジアの国々も今や日本以上に中国との関係が深くなっているか、深くなりつつある。

 人口から言っても、土地の広さやそれに伴うアジア諸国との距離から言っても、今や中国の方がアジアの中心であり、アジアを代表するといえば外から見れば日本より中国にならざるを得ないのではなかろうか。

 いずれは日本もADBにとどまらずAIIBにも加入して一緒にやって行かざるを得ない日がやってくることは避けられないのではなかろうか。今後のアジアは良し悪し別にして、中国を中心にして協調してやっていくしかないのではなかろうか。

 その時のためにも、そろそろ一方的なアメリカ追随を見直して、アメリカに梯を外されて慌てなくても良いような準備をしておくべきであろう。