だんだん壊れていく国

 戦争で国中焼け野が原になって餓死者まで出る騒ぎ、街には闇市や浮浪者が溢れ、買い出しとララ物資でようやく生き延びたた時代を知っている人が少なくなるとともに、最近の世の中はこうも変わっていくものかと驚くばかりである。

 戦後、朝鮮戦争ベトナム戦争の特需などにも助けられて幸い経済的には復興し、経済大国と言われるようになり、人々の生活も豊かになり、一億総中流と言われた時期さえあったのに、世の流れに盛衰は避けられず、少子高齢化の時代となり、産業も停滞し、国の借金も増え、社会的な格差や貧困化が問題となり、その上、アメリカ追随の政治は次第に右傾化が進み、近隣諸国との対立も徐々に強くなってっきている。

 戦後引き続いて政権を握ってきた自民党も、戦争を知らない世代に交代するに伴って、大日本帝国ノスタルジアを感じる右翼政治家達に占められるようになり、国粋主義神道主義が主流を占め、野党勢力の脆弱化もあって着々と法的整備も進め、独裁政治化が進んでいっている。

 最近の法案の動きだけ見ても秘密保護法、安保関連法案、テロ等関連法などと、一歩一歩国民を取り締まり、独裁政治化へと進んでいるし、メディアや教育への干渉も強くなってきている。それに呼応して孤独な貧困青年などの不満のはけ口としてのポピュリズムが力を増し、近隣諸国や国内の少数派への悪口や嫌がらせ行動などの右翼的な言動なども次第に公然化してきている。

 こう見てくると、ちょうど昭和の始まり頃の社会を思わせるものがある。何だかまたこの国がだんだんと壊れていくような気がしてならない。以前から言っているように戦争は決して急に始まるものではない。一歩一歩準備が積み重なって行って最後に起こるもので、もう直前まで行けば誰にも止められなくなって、否応無しに始まり、皆を悲惨と絶望の坩堝の中に放り込んでしまうということはつい百年にも満たない歴史が示している通りである。

 このまま進めば同じ過ちを繰り返すことになる恐れが非常に強いことを危惧する。今度かりに戦争が起これば、先の戦争よりもっと惨めなことになるのは間違いない。日本国土が戦争に巻き込まれるであろうから、沖縄戦で経験した人口の4分の1が戦争のために死亡する以上のことのなることを覚悟しなければならないであろう。

 しかも大きい枠で前回と違うのは、良かれ悪かれ大日本帝国は独立国であったが、現在の日本国は憲法に優先する日米同盟に支配されている従属国であることにも注意しておく必要があろう。アメリカの意向に振り回されてひどい目に遭わされないようにくれぐれも懸命な対処して欲しいものであるが、安倍政権の姿勢を見ているとまるで忠犬のごとくである。

 今の事態が今後どのように進んでいくのか。予測は難しいし、私は余命も長くはない。子たちも一人も日本にいないので、この国がどうなろうと知ったことではないと開き直ることも出来ようが、やはりここで生まれ、ここで育ち、長い間住んできたこの国の将来に無関心ではいられない。せめて二度とあの惨めな戦争の惨禍にだけは次世代の同胞たちに逢わせたくないと強く思うので、やはり今の世相が心配なのである。