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下士官根性

 階級制のしっかりしている軍隊の組織では上官の命令には絶対服従しなければならない。したがって自分の怒りや不満を上に向かって吐き出すわけにいかないので、捌け口はは下へ向けられる。不平不満は上から下へと命令の伝達のごとく、下へ下へと伝わっていくことになる。最後の新兵になると、もうそれより下はないので、仕方がないから犬を蹴るというのが昔よく言われて話である。

 そこから下士官根性という言葉が生まれた。下士官は将校には頭が上がらないが兵隊の中では最も位が上である。そこで上の将校にはもっぱらおべっかを使って持ち上げて自己保全を図り、その支持の元で下の物には遠慮なく傲慢に振る舞ってストレスを解消することになる。

 これはもともと旧帝国軍隊での話であったが、一般社会の普通の会社などでも似たような上下関係があったので下士官根性という言葉は広く使われるようになり、戦後もずっと生き続け、未だに使われることもよくあるようである。

 最近の二つの出来事での安倍内閣のやり方を見ていると、この下士官根性丸出しのことがよくわかる。

 沖縄では知事を先頭に県民の一致した反対にも関わらず、高江村のヘリパッドの建設や辺野古への基地移転を強引とも言えるやり方で進め、さらに、先日起こったアメリカ軍のオスプレイの墜落事件では、アメリカ軍の言うなりに事故による住民たちの不安も無視して、すぐに飛行再開、空中給油訓練開始に賛成し、県民には何の説明もなかったことは誰から見ても国民の政府とは思えないやり方であった。

 アメリカとの約束を優先せざるを得ないのであっても、日本の政府であれば、当然その説明を国民に行い、アメリカとも交渉し、国民の理解をうるべく努力をすべきであろう。政府はこれまでの長期にわたる米軍基地による沖縄県民の苦しみを理解し、アメリカに対しても言うべきことは言うべきで、沖縄県民の理解を得るようにもっと努力すべきである。

 そう言うところに、今度は韓国で民衆が釜山の日本総領事館の前に慰安婦像を置くという事態が起こった。ところがそれに対する日本政府の対応があまりにも沖縄に対する対応と異なるのに驚かされたのは私だけではあるまい。朝日新聞の声欄にも、僧侶の方が「米韓で異なる安倍外交 疑問」として投稿されていた。

 確かにアメリカの仲介で二国間の合意がなされ、日本も十億円を支払って、二度と問題を蒸し返さないと言う協定?を結んだ後なので、韓国人のこの行動には問題があるが、政府のやったことではなく、韓国外相も適当な行動ではないと言っていることである。

 ただ、韓国の人々から見れば過去の植民地時代の屈辱の歴史もあり、被害者の苦悩は加害者の理解を超えるものであり、民衆がやったことであり心情は理解できないことはない。韓国政府が指示したことでもない。それに対して駐韓大使と釜山の領事を帰国させると言う強い態度で臨んで、外交問題として騒ぎ立てることは少し傲慢すぎるのではなかろうか。問題を大きくすることによって却って解決を困難にしてしまうのではなかろうか。

 この二つの出来事に対する安倍政府の対応の仕方を見ると、下士官根性そのものだと言わざるを得ない。アメリカには文句の一つも言えず、相手の言うことのみを聞いて、自国の国民の声にさえ耳を傾けようとしないのに、与し易いとみた隣国の韓国に対しては居丈高に交渉をするより先に大使を召還するような國交断裂の一歩手前とも言えるようなことまでやって怒りをぶつけると言うのはあまりにも幼稚な対応の仕方ではなかろうか。

 もう少し日本の政府であるならば、国民の立場にも立った上で、それを代表して独立した国家として大人の振る舞いをしてもらいたいものである。