北方領土は帰ってくるか?

  FacebookのTBS Newsによると、「【速報】自民党の二階幹事長は日ロ首脳会談の成果について「国民の皆さんの大半はがっかりしている」と述べた。」ということらしいが、今度の日ロ首脳会談は少し良識のでもある人なら、初めから結果はわかっていたのではないだろうか。

 北方領土問題は冷戦時代からの対ソ連の国内向けの宣伝であり、問題にしているのは日本だけで、国際的に日本が主張できる根拠もなく、北方領土が返還されるわけがない。歯舞、色丹は平和条約が結ばれれば帰ってくる可能性もあるだろうが、国後、択捉はもう71年以前からロシア領になっているので、新たに戦争をして勝って奪い返すようなことでも起こらない限り、戻ってくる可能性はゼロであろう。

 固有の領土だからといっても、そんな理屈は国際的に全く通用しない。第一に北方領土は200年前にはアイヌ人の土地で、どこの国の領土でもなく、日本の領土でもなかった。明治の少し前になって、北海道が開拓され始め、アイヌ人を追い出した形で初めて

に北海道に続く島とされ、ロシアとの交渉で日本の領土と認められることになったものである。

 国境は近代国家成立後に全て人為的に決められたものであり、ヨロッパその他の歴史を見れば戦争などの力ずくで決められた国境が話し合いで元の戻った例はまずないのではなかろうか。話し合いで解決できる可能性のあるのはせいぜい細かい境界線の取引だけである。

 戦後のヨーロッパにおける国境線の変更は北方4島のような軽微なものではない。理屈がどうあろうとソ連が占領し、自国に組み入れ、しかも71年も自国の領土になっており、その間にロシア人の生活が根付いている土地はいくら元日本領土であると言ったところで返ってくるわけがないことを理解すべきである。

 竹島尖閣諸島のような小さな無人島でさえ主権の争いが続いていることを見ても、主張がどうであれ現在の実質的な支配者を話し合いで変更することがほぼ不可能に近いことが分かるであろう。

 もともと北方領土については、戦後日本は諦めており、当時の鳩山首相がそれを認めた上でソ連と平和条約を結ぼうとしたところ、日本がアメリカの許可なくソ連と平和条約を結ぶのを嫌ったダレス長官から「北方領土放棄を認めるなら沖縄も返さないぞ」と脅されたことから問題が始まっているのである。

 当時は冷戦時代の真っ最中で、日本は対ソ戦の最前線で、自衛隊も北海道に主として展開しており、机上演習では、ソ連が北海道へ侵入してきた時の作戦で、札幌は守りきれないので一旦放棄して山岳地帯に後退して反撃に出るというような作戦まで立てられたこともあったのである。

 そういう時代背景の元に、アメリカに追随してきた政府がソ連に対峙する政策の一つとして、むしろ対内的に北方4島返還を政策に掲げて今日まで維持してきたものである。国際的にも戦後に定着した領土を今更返還することなど考えられないであろうし、おそらく日本の官僚もそのことは十分理解しているはずである。ただこれまで引っ張ってきた問題をできれば政略的に利用し続けようというだけであろう。

 今度の首脳会談で元住民の島への願望を書いた手紙がプーチン大統領に渡されたといっても、今となっては元島の住民は日本では最早年老いた少数しか残っておらず、戦後に島に移り住み、今では島を故郷とするロシア人の方がはるかに多くなってしまっていることも知るべきである。

 日本はいかに厳しくても、すでに受け入れたポツダム条約に従い、北方領土返還の幻想を諦め、平和条約を結び、経済的な交流を強く深くしていくことが、平和のためにも相互の発展のためにも必要なことではなかろうか。