今年のノーベル賞

 今年は東京工業大学の大隈良典氏がノーベル整理学・医学賞を貰われた。先ずはお目出度いことでお喜び申し上げる。

 一昨年、昨年と続いて日本人の受賞があったので、二度ある事は三度あるということであろうか。今度は誰がもらうだろうかと、今年はノーベル賞の発表がある二〜三日前から新聞やテレビがまだ決まってもいないものを予想して騒いでいた。

 最近だけ見れば、ノーベル賞受賞者数が日本はアメリカに次いで多いとか言って自慢しているようで、どうもノーベル賞受賞者数を国威発揚に利用しようとしてたいようであるが、長い歴史の中では、ノーベル賞受賞者の数だけ見ても、アメリカが347,イギリス114、ドイツ82、フランス57、スエーデン32で、日本は増えたと言っても、まだスイス、ロシア、オランダなどと肩を並べる程度であることも知っておくと良いであろう。

 もちろんノーベル賞は伝統のある世界的に有名な賞であるが、いろいろな分野での功績はそれだけで評価されるものではなく、他にもいくらも専門的に権威のある賞もあり、ノーベル賞といえどもそれだけが全ての基準になるものではない。

 ノーベル賞の中にもオバマ大統領や佐藤栄作首相がもらった平和賞などという政治的なものもあり、他の分野の賞にしても、一つの評価に過ぎない。功績のあったとノーベル委員会が認めた個人を表彰するものであり、国を表彰するものでは決してない。

 近年日本のノーベル賞受賞者が増えたのは、過去に日本の経済成長期に自然科学などの研究分野の裾野が広がり、研究環境が良くなった成果が今に現れてきているためであろう。長年の研究者の地味な研究の蓄積の結果であり、国威発揚などとして騒ぎすぎるようなものではない。

 しかも、大角氏も心配しているように、最近の政府の方針や大学などのありようを見ていると、近視眼的に実用や実利に結びついたものにばかり支援が強く、すぐに成果の出ない基礎的な研究がないがしろにされる傾向が強くなっているので、最近のノーベル賞受賞の傾向もいつまで続くか疑問でもある。

 華やかなノーベル賞受賞だけにこだわることなく、これを機会にもっと研究の裾野を広げ、すぐには成果の上がらないような地味な基礎的な領域の研究をも暖かく見守れるような、成熟した環境を整えることが、人類全体の将来の発展に重要であることを認識し、しかるべき対策を考えていくべきであろう。