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車内持ち込み身の回り品

 日本では普通の切符で車内に持ち込める身の回り品の大きさや重さは、JRの基準に準拠して、略どの鉄道会社でもおよそ同じ基準になっているようである。

 一例を挙げると「お客様は、列車等の運行状況により、運輸上支障を生ずるおそれがないと認められるときに限り、1辺の長さが最大2メートル以内でかつ3辺の最大の和が2.5メートル以内で、その重量が30キログラム以内の物品を無料で車内に2個まで持ち込むことができます。」といったのが阪急電車の掲げている規定である。

 その他に、時に問題になるので書かれているのは、自転車は折り畳んで袋に入れれば可。ペットはケージに入れれば可。長いものでも袋に入れて車内で立てて携帯すれば可。などと可なり色々なものも持ち込めるように配慮されている。

 最近では、一番多い大きな荷物といえば、何と言っても、旅行者の引きずる大きなキャリーバッグなどと言われる旅行鞄であろう。たいていは大きなカバンの上にまた手持ちのカバンを載せている。旅行者でなくとも、仕事での出張者と思しき人たちもキャリーバッグを引いている人が多く、最近はどこへ行っても大きなキャリーバッグを引いた人に溢れている感じがする。、混雑した通路などでは大きなバッグに引っ掛けられないかと不安になることもある。

 次いで多いのはベビーカーであろうか。少子化の時代だから赤ちゃんは余計に大事にしなければならない。ただ、電車の中でしっかりストッパーをかけないでいる新米のお母さんに時に出会うことがある。安全はくれぐれも考えて欲しいものである。

 安全といえば、もっと危ないのは下りのエスカレータでベビーカーを前にして下っている人がいることである。もしエレベータが急に止まったりしたらどうするつもりであろうか。私は若い頃に、エスカレータを大きな旅行鞄が転がり落ちる現場を見たことがある。稀にはエスカレータの事故の報道もある。下る時は、必ずベビーカーやキャリバッグなどは自分より上段の後ろ側に置いて欲しいものである。

 次いで車内に持ちこまれる大きなのは電動車椅子であろう。手押しのウイールチェアは小型でベビーカーと差して変わらないが、電動車椅子となるとかなり重くて大きく、乗り降りには渡し板を置くなど駅員さんの手助けもいる。しかし、これは身障者にとっては必須のもので、駅員さんもご苦労だと思うが、昔なら車椅子に乗らなければならないような人は電車に乗って外出も出来なかったのだから、世の中も大分進歩したもので、是非協力したい。

 また、時にペットの持ち込みが問題になることがるが、ケージに入れておれば普通は全く問題なく、時にケージを抱えた人のペットを眺めて気が休まることさえある。盲導犬などは大きいいが、殆どはよく訓練されているので、犬嫌いな人とも共存出来る。釣り竿や剣道、弓道などの長いものを持ち込む人もいるが、そうした人たちは大抵、各自で立てて保管しているので問題になったこともあまりないのではなかろうか。

 人にはそれぞれ違った必要品があり、違った活動のための必要な道具や條件もある。出来るだけ多くの人の多くの条件を受け入れ、他の乗客には迷惑がかからない線で車内のルールも決められている。自分もいつ何時思わぬ必然性が生じて、大きな荷物を持って電車に乗らねばならないことが起こるかもしれない。車内で飲食をしたり、大声でしゃべり続けたりするマナーの悪い人達と比べれば、超満員の列車などを除けば、他人の大きな荷物などにはより寛容であり易いであろう。戦後間もない頃はどの電車も「買い出し」の人の大きなドンゴロスのリュックで満員であったことも思い出す。

 それなら電鉄会社の規則を守るとして、実際にどのぐらいまでの荷物なら許されているのであろうか。先日たまたま遭遇した例が興味深かった。「成る程ね。ここまで出来るのか」と思わず感心させられた。

 比較的若い女性だった。音楽家らしく何の楽器か知らないが、チェロより大きい少し長めのケースに入った楽器を高々と言わんばかりに背中に背負って、前にはスーパのカートそっくりの手押し車を押している。カートの下段には黒い四角い大きな鞄のようなものを一杯に積み、上段には大きなリュックサックらしいきものを載せ、手元の取っ手のあたりにパソコンを載せて拡げ、両耳には頭にかぶさる大きなイヤホーンをしている。

 それも、たまたまその日だけそんな重装備で電車に乗り込んだという感じではなく、慣れた感じで、当たり前のように静かに車内に入り、一直線に他人の邪魔にならないように反対側のドアの片隅へ行ってじっとしていた。大きな荷物もさして他人の迷惑になる気配もなかった。

 おそらく素人音楽家で、あちこちのクラブやステージを渡り歩いているので、いつも道具一式を同じようにして運んでいるのであろう。車でやっている人が多いのであろうが、その女性は車を持っていないので電車を利用して移動しているのであろうか。

 あれだけの荷物を持っての電車での移動は音楽家の女性にはかなりなきついことであろう。健気な彼女を密かに応援したい気持ちになった。毎日のようにあれでは大変だろうが、それでも好きなことは止められないのだろうなどと思った。最近偶然出くわしたのだが、普通の電車で見かけた最大の「携帯品」に驚かされた。

 いろいろな人がそれぞれにいろいろな必要からいろいろな物を携えて電車に乗っている姿はまさに社会の縮図である。暇な老人はそんな光景を観察させてもらって楽しんでいるといったところである。