ふたたび破滅に向かって突っ走るのか?

 今の日本の政治社会情勢の変化の動静をみていると、もし、このまま進んで行くとナチスドイツの轍を踏んで二度目の大きな破滅に向かって突っ走ってしまう恐れが見て取れる。

 今度の参議院選挙で自民党公明党大阪維新の会など憲法改正を唱える党派が三分の二を超えてしまった。安倍首相はいつものことながら、選挙中は経済を前面に出し、憲法や政治のことにはなるべく触れないようにしてきて、選挙が終わるなり、選挙の時は最後に小さく最後に掲げていた憲法改正を「公約にも掲げていた通り、これから本格的な憲法論議を進めていくと言っている。

 予想される憲法改正の論議は、各党によって改正目標はかなりバラバラなこともあり、おそらくは、北朝鮮や中国をダシに使って、緊急事態法を憲法に盛り込む改定を目指すのではなかろうか。

 今でも世論を嫌中、嫌韓に傾かせることに大分成功しているし、周辺の国際情勢の不安を掻き立てれば、緊急事態法を憲法に取り込むことに成功する可能性が高いだろう。場合によっては故意に何かをでっち上げ、周辺の平和が脅かされると国民の不安を掻き立てるようなことをしないとも限らない。そうすれば成功する確率も高くなる。

 一旦この緊急事態法のようなものを憲法に組み込めさえすれば、あとは機会を見て緊急事態を宣言しさえすれば良いのである。自分らの思う通り、憲法や法律など全てを無視して独裁政権を作ることができる。麻生副総理が言ったようにヒトラーを見習えば良いのである。

 彼らの憲法改正の真の狙いは、自民党憲法改正案にもあるが、彼らの勉強会で誰かが言っていたように、「国民主権」と「基本的人権」、並びに「平和主義」の三つを廃して、天皇を担ぎ、明治憲法を復活させるところにあるようである。憲法を権力を縛る法から国民に義務を課す法に作り変えるのである。

 しかし、仮にこれが成功するとしても、このアナクロリズムが今更、世界に通用するはずはない。この国は再び東洋の孤児となって破滅に向かうよりなくなる。独裁政治で怖いのは破滅してしまうまで誰もそれを止めることができないことである。かっての大日本帝国の二の舞である。誰も止められないで破滅まで突走ってしまわざるをえなくなる。

 しかもアジアの情勢も、世界の潮流も以前と同じではない。アメリカの一国支配が続かない中でアメリカへの従属を強め、強大となった中国や韓国など隣国とあえて対立して、民主政治を経験した国での独裁政治を続けることが果たしてどこまで可能であろうか。アメリカに振り回されるか、振り回されなくても、もはや軍事力で勝てる世界情勢ではない。

 問題の解決は外交しかないのにこの国は完全にアメリカに従属してしまっているので、自分で決定的な決断をすることができない仕組みになっている。そういった条件の中での独裁政権がいかなる運命になるのか、せめて国民を独裁政治の犠牲にして破滅にまで追い込まないようにしてほしいと願うばかりである。

 この国にはまだまだ良識を持っている人々も多い。独裁政治が一時的な恐怖の夢であって、強力な国民主権と民主主義や平和主義が回復することを願って止まない。