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沖縄戦体験者のPTSD

 6月23日が沖縄戦最後の日で慰霊祭が行われたが、最近の雑誌に「沖縄戦体験者の4割がPTSDに苦しんでいる」というある精神科医師の記事が載っていた。沖縄戦を体験した高齢者の4割がPTSDと言ってもよく、今なお、「基地の存在が沖縄の人々の心に打撃を与えている」としている。

 2012年4月~13年2月、沖縄県内の75歳以上のデイサービス利用者らを無作為に選んで面接し、沖縄戦心的外傷後ストレス障害PTSD)について調べた結果、359人(平均年齢82歳)のうち、141人(39%)、実にほぼ4割の高齢者が沖縄戦によるPTSDの可能性が高いと診断された由である。

 一番多い症状は不眠で、これら沖縄の高齢者たちの不眠は夜中に何度も目が覚める不規則なタイプだった。このため患者たちは長年、「うつ病」と診断されていた人が多いが、不眠以外の患者の症状ではうつ病とは診断できない「奇妙な不眠」で、アウシュビッツ収容所からの生還者の精神状態を調査した米国の研究者の論文にも酷似した症例が見つかったと言われる。

 凄惨な戦場の体験によるPTSDで、トラウマ(心的外傷)の記憶が暴れて自分のメンタルに侵入し、それが睡眠障害などを引き起こしているものと考えらる。

 こういったPTSDの人々は思わぬことがきっかけで、トラウマが突然、フラッシュバックすることがあるもので、大相撲の千秋楽の表彰式で「君が代」が流れると、戦争を思い出して身体が震える人もある、死体の臭いがしてくるという人もいたと書かれている。

 したがって、今日になってもなお続く米軍基地や米軍機の轟音、それに米軍関係者による事件や事故が繰り返されては、それらが多くの沖縄戦体験者に「戦場」の記憶を想起させる要因にもなり得るであろうと考えられる。本土の人にはわからない沖縄の人々の深い苦しみを考えるべきであろう。

 私自身も未だに大相撲の表彰式で君が代を聞かされるのが嫌でテレビを消しているし、スポーツなどでの日の丸も戦時中の軍人が浮かんでくるので目を背けたくなるのをどうしようもない。沖縄の人とは比べるべくもないが、私と比べものにならない過酷な記憶に心を馳せないわけにはいかない。

 「天皇陛下の御為には命を賭けても・・・」とまともに信じていた17歳の海軍兵学校生徒少年だった私にとっては敗戦は単に戦に負けただけではなく、自分の全存在が否定されてしまったのであった。2−3年以上も精神的な虚脱状態が続いた。あの暗い恐ろしい時代は今も忘れられない。まさにPTSDだったのであろう。

 花火を真下で見ると空中一面に落ちて来た焼夷弾がフラッシュバックし、空高く湧き上がる入道雲を見ると原子雲(原爆投下時の雲)が浮かんだのが何十年も続いた。おそらく沖縄で戦場に巻き込まれた人は私の何十倍も恐ろしい目に遭われたことであろう。

 せめてそういう沖縄の人たちが死ぬまでに心の安住の地を見出せるようにすることは政府の国民に対する最低限の義務ではなかろうか。