読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

虎の威を借りる狐

 一昨日の新聞は中国の艦艇が尖閣諸島の領海外の接続水域に入ったと一面に大きく報じ、夕刊にまで関連記事を載せてて大騒ぎの感じである。外務省は中国大使を呼んで抗議したと書いてあった。

 しかし、奇妙に思えるのは、つい先日には南シナ海南沙諸島の接続海域について、アメリカが航行の自由を主張し、日本もそれに同調して中国を非難していたのに、今度は日本が実質支配している尖閣諸島での接続海域についてはけしからんというのはどういうことだろう。一方で他国の接続水域の航行の自由を主張しておきながら、自国の接続水域を他国が航行するのを非難するのは矛盾ではなかろうか。

 しかも、今回はロシアの艦隊が先に接続海域を抜けて航行し、それを追う形で中国艦艇が入ったので、中国は日本の尖閣領有権を認めていないので、ロシア艦隊の動静を警戒するために接続海域に入ったとも考えられるという記事もあり、ロシアに対しては大使を呼んで非難しているわけでなく、中国だけを非難しているのはどうしてであろうか。

 詳しいことはわからないが、接続水域を他国の艦船が通過することが問題なのでなく、中国が領有権で争っている島の接続水域に入ったことを問題にしているのである。従って、中国大使を通じて文句を言ったところで、問題が解決することがないことも分かっている。尖閣の領有権を改めて強調することが目的なだけのようである。従って、この問題が大きく発展する危険はないであろうが、むしろこの問題をメデイアに取り上げさせて、今にも中国が攻めてくるぞと言わんばかりに、反中国の世論を高める一環として役立たせようとしているのでろう。

 本来一面で報じなければならない程の大事件であろうか疑問である。中国脅威論を煽って戦争の出来る国を作り上げ、軍備増強、軍国主義化に役立てようというのであろう。政府の扇動や働きかけによって、新聞やメディアはこのところ、何かにつけて中国に難癖をつけて中国の悪口ばかりを言って反中国を煽っているようである。

 翻ってみると、かって民主党政権が生まれ、小沢代表が大勢の議員を引き連れて中国へ行った頃までは日中関係も比較的良かったが、それに対するアメリカや追随する日本の官僚たちが、危機感を感じたのか、大々的な反攻に転じ、小沢や鳩山を追い出し、石原が都による尖閣買い上げをぶち上げた頃から、尖閣問題を殊更に取り上げ、反中、嫌中ムードを盛り上げてきたのである。ちょっと冷静に考えれば分かることだが、小さな無人島の尖閣諸島が戦争までして領有権争いをしなければならないことであろうか。こういうことを見れば、この数年のこの国の嫌中、反中は自然の流れというより、人為的に故意に作られたものである。

 ちょうど中国の経済が日本を抜いた時期とも重なり、人々の中国の発展に対するやつかみ感情も重なったのであろうか。このところの中国の経済発展の鈍化を捉えても、もう中国経済は崩壊して未来がないかのように騒いで溜飲を下げているような気配もある。事実、中国経済は外需から内需に変わるなどで伸び率は落ちているが、それが崩壊にまで結びつくとは考えられず、今でも日本の停滞とは比べ物にならない割合で発展を続けているのである。

 中国からの観光客が今でも街にあふれ、日本経済もそのおかげを多分に被っているわけで、あまり中国の悪口を言えた柄ではないのではなかろうか。それでも、日本人の中国嫌いの割合が増え、いろんなメデイアを通じて現実と乖離した中国のマイナスの面ばかりが強調されるので、仕事で中国へ行った日本人が、中国で感じる社会や経済の実態が日本での報道から受ける感じとあまりにも合わないので戸惑うというようなことが新聞にも載っていた。

 中国は何と言っても大きな隣国である。日本が生きていくためには嫌でもずっと付き合っていかねばならない国である。人口も面積も日本とは比べ物にならない大きさである。中国を無視して日本は生きていけない。右翼の人の中には、また中国と戦争をしても良いようなことを言う人さえいるが、仮に中国と戦争をしても決して勝てる相手ではない。先の日中戦争でも、あれだけ日本が占領しても持ちこたえ、ついには日本が負けた歴史にも学ぶべきであろう。

 仮に核戦争にでもなれば、水爆の4〜5発だけで小さな日本列島は誰も生きて住めなくなってしまうだろうが、広い中国大陸は少々痛みつけられてもまだまだ逃げる所もある。経済力も今や日本以上だし、大陸なので周囲との交流も出来る。どう見てもはるかに中国に方が有利であり、小競り合いはあったとしても、本格的な中国との戦争など考えられない。

 そうであれば中国と友好関係を深めることが将来の日本にとって不可欠なことである。長い歴史を見ても中国の存在を無視して日本はありえなかったことも思い出すべきであろう。アメリカの半植民地としての義理があるにしても、反中国の立場を固定、永続化してはならない。

 近い過去の優劣だけを考えて判断してはならないし、日本が中国侵略の歴史は決して忘れてはならないものである。過去の戦争はアメリカとだけ戦ったものではない。始まりも中国への侵略であり十五年戦争の中で最も長期間戦かったのも中国とである。アメリカとの共存が大事であっても、隣国との共存共栄の方がはるかに得られるものは大きい。

 アメリカの政策に踊らされて中国を敵視することは、得られるものが少なく、失うものがあまりにも大きいことに気づくべきであろう。いつまでも虎の威を借る狐あるいは狼のように隣国を嫌い敵対することは将来の自国を亡ぼすものである。アメリカは自らの利害でこの国を利用しているだけである。「遠い親戚より隣の他人」という言い伝えも心に留めたい。ましてやアメリカはボスであっても親戚ではない。