中一の娘がネットショップで金儲けをしたいと言い出したら・・・

 日本で活躍されている宋さんという中国の方が続けてられる「論長論短」というメールが面白いのでいつも読ませてもらっているが、今回は「儲けたいと言い出した中一をどう思うか」という表題であった。親の反応が日本と中国で違うのが興味深い。

 記事は宋さんの知人で、中国人と結婚している日本人の女性からの質問についてのものであったが、中学1年の娘が、「ネットショップをやっている人を手伝って、自分もモノを売って儲けたい」と言い出したのだそうである。

 それに対する母親としての最初の反応は、「冗談じゃない。まだ責任も持てない年で、他にやる事いくらでもあるのに。大体、金、金、金〜という風にはなってもらいたくない」ということだった由。

 ところが、中国人の夫の方はこれは出番とばかりに話に乗って、いろいろネットビジネスでの手ほどきや、代理販売と取り次ぎ販売の違い、物的・人的リスクなどまで教えて、娘は「微店」というネット上の店を開店してしまったようです。

 夫の言い分は「子供だっていろんな趣味があっていいし、これをやってみればMBAに行くよりずっと勉強になる。他の友人から教わるより俺が教えた方がいい。子どもにとって必要なのは独立して生きていく力で、これは又とない機会である」という。

 更に、ちょうどその母親の職場の日中カップルの一家でも似たようなことが起きて、日本人の母親も同じ反応だったが、やはり中国人の夫はやはり自分の夫と同じ反応だったそうで、この違いは果たして、男女の差か、二国の差かと思案したそうで、

「日本はやっぱり安易な商売に対する忌諱があるけど、中国人は根っからの商売を良しとする実利的風土だからでしょうか?」と尋ねられたようです。

 これに対する答えは明確で、表記の質問をと聞いた瞬間、宋さんは「無条件に『素晴らしい!』何の理由もなく、時間を置かずにこう思いました」そうで、以下のようにメールに書いてられます。

 「長い歴史の中で中国人の持ち味と価値観は時代ごとに大きく変わります。過去の中国人はどう思うかはわかりませんが、現在ならば、たぶん殆どの中国人は自ら商売をやりたい子供のことを頼もしく感じるでしょう。これは拝金主義や商業重視の社会風土に由来する部分であることを否定できませんが、人生や社会をどう捉えるかに由来する部分も大きいです。

 私にとってビジネスそのものは素晴らしいことです。もちろん合法的で顧客に評価されることが前提です。我々の社会のすべてがビジネスの上で構築されていると言っても過言ではありません。ビジネスがなければ税収もなく雇用も快適な暮らしもありません。

「儲け」はすべてのビジネスの必要最低条件です。儲けのないビジネスはいずれ行き詰まります。だから「儲け」は経済社会のキーワードです。中国語や英語には(日本で言う)「金儲け」と同じニュアンスの言葉はありません。“賺銭”は英語のMake Moneyと同じく、マイナス感情が付随していません。しかし、なぜか日本では儲けることは限りなくマイナスの意味を持つのです。

 ビジネスは結果として「人々の役に立つ」「世の中を豊かにする」ことに繋がります。金儲けは自助と自立の出発点です。サラリーマン達は今日も奔走して少しでも売上が上がるように、少しでも利益が出るように頑張っています。中一のお子さんが儲けを考えて行動に移すことは自立への素晴らしいステップであり、結婚しても親の金銭支援をもらう大人より一万倍立派です」と。

 中国人と日本人の金銭感覚の違いがよく分かります。私など今でも「武士は喰わねど高楊枝」と金銭勘定にこだわることを蔑視するような思いをどこか捨て切れずに持っていますが、今の日本人の平均的な姿は、私同様に金儲けを蔑む姿勢を見せながらも、昔以上に金銭にこだわっているといったところではないでしょうか。その表れが汚れのない子供を汚れた金銭から遠ざけておこうという気持ちにさせるのではないでしょうか。

 内心金儲けにこだわりながら、金儲けを全て拝金主義として忌避するのが高尚だとする裏表を演じ分けているのが日本的なやり方で、中国人の方が素直に金儲けを必要で良いことと解釈し、それをそのまま実行していると言えるのでしょう。

 歴史や文化の違いからくるものですが、これは中国が違っているというより、世界の大勢は中国と同じかそれに似ており、日本が異質だと言えるのではないでしょうか。アメリカ人なども金儲けを自慢しますし、金儲けを隠すようなことはありません。ヨーロッパでもそのようです。

 どちらが良いとは言えませんが、日本が特殊なのであって、大勢は違うのだということは知っておいたほうが良いのではないかと思います。