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政治的に利用された「拉致問題」

 北朝鮮による拉致被害者蓮池薫さんの兄で、「救う会」元事務局長の蓮池透さんが2015年末、著書『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)を出版したそうだ。まだ読んでいないが、おそらくこれまでの安倍首相をはじめとする政府のやり方ではラチがあかず、長年の間に積もり積もった気持ちをもう書かざるをえなかったのであろう。

 これに対し、国会でかって蓮池さんらの帰国交渉に関与した中山議員らはこの本の主張は誤りであり、蓮池透さんは北朝鮮工作員に踊らされているとまで言っているようであるが、客観的に見てそのような可能性は低いであろう。事実の成り行きを振り返ってみると政府が真剣に拉致被害者を連れ戻そうと努力したとは見えない。国会でこの問題を追及した緒方議員からは蓮池さんに「身辺に気をつけてください」という電話があったそうである(田中龍作ジャーナル)

 政府ははじめから拉致問題を政治的に利用するだけで、本当に被害者を救出する気があったのか疑問である。本気で救出するのであれば、もっと早くに北朝鮮と交渉して多少の不利な条件には目をつむってでも連れ戻すべきであったであろう。

 人質になった国民を救出するのは政府の重大な責任であり、アメリカ政府などはこの拉致事件の後にも、要人が北朝鮮に出向いて交渉し、勾留された自国の被害者を救出しており、日本の場合も交渉次第では救出不可能であったとは言えないのではなかろうか。

 北朝鮮に対する制裁や圧力はこれまでの経緯からもわかるように被害者救出に有効であるとは思えないのに、相変わらず安倍首相はそれを繰り返しているだけで、国民である拉致被害者の帰国を優先する考えはないようである。被害者の帰国が先で制裁や圧力はその後の問題である。

 現在のようにこれだけ年月が経ってしまうと、拉致被害者の中にはもう亡くなられた方もおられるかも知れないし、北朝鮮での生活が日本での生活よりも長くなった方も多いであろう。この問題の解決は一層困難になってしまったのではなかろうか。

 この時点になっても「全員の帰国がないと解決にはならない」などと言っているのを聞くと、無理なことを言ってむしろ解決を拒んでいるようにさえ聞こえる。今からでも良い。不利な条件を呑んででも、出来ることはすべて真剣に交渉して一人でも多くの被害者が本当に帰ってこられるように交渉してもらいたいものである。