韓国に学ぼう

 今の国内の雰囲気だと「韓国に学ぼう」などというと、「何を馬鹿な!韓国に学ぶことなどあるのか」という返事が返って来そうである。しかし、少し謙虚になって考えてみよう。 

 韓国の朴槿恵大統領が米国の反対を押し切って中国の「抗日戦争勝利七十周年記念パレード」に出席し、過去最大規模となる計156人の経済使節団とともに訪中するとう。それに対し安倍首相は欧米諸国の首相などの出席状況なども見、アメリカの意向も伺って出席を断った。

 抗日戦争勝利記念の式典だから当然と言えるかも知れないが、万一ここへ日本の首相が出席して、ドイツのワイゼッカー大統領のように、過去の侵略を謝罪し今後の平和と友好を誓ったならどんな未来になったことであろうか。

 それは兎も角、日本のメディアは『「抗日パレード」出席のリスクに見合う成果を韓国は得られるか』などと見下したな論評を掲げ、国連潘基文事務総長の出席にまで中立的立場を取るべきだとクレームをつけているようである。

  しかし国連第二次世界大戦時の連合国が日本の敗戦前に成立したもので、未だ国連憲章には敵国条項なども残っているぐらいで、ヨーロッパでの勝利記念式典にも潘基文事務総長は出席しており、中国の式典に出席することに敵国条項の対象である日本が文句を言える筋合いのものではない。朴槿恵大統領の出席についてはむしろ日本が学ぶべきではなかろうかと思われる。

 韓国は朝鮮戦争以来の長い歴史を経て、日本以上にアメリカに従属した関係を維持して来たが、それでも日本以上に自己を主張し、必要とあらば中国や北朝鮮との間で独自の対応をしてきている。今度の訪中も朴槿恵大統領が期待していると考えられるのは、韓国の経済の減速状況の打開策として中国との貿易促進と北朝鮮問題での前進が目的と言われている。同じアメリカ追随でも日本とはかなり違っているように見受けられる。

 それに対して戦後の日本のアメリカ追随姿勢はずっと変わりなく、この国には確固としたアメリカ追随の組織が出来ているようで、少しの反対姿勢もたちまち潰されて来た歴史がある。田中角栄事件や鳩山・小沢の民主党政権の中国接近政策の結果をみてもよく分かる。今これだけ多くの国民の反対の声にもかかわらず、政府が国会で強引に通そうとしている安保関連法案も、国会でも追及されたように、アメリカのアーミテイジ・ナイ提案の各条項をそのまま法律化しようとしているに過ぎない。

 これを見ると韓国の方がアメリカに追随しながらも、日本より自主的な主張を貫いているように見える。日本では韓国を蔑視しがちだが、韓国の方が優れている点も多々あるような気がする。日本は少し謙虚になって学ぶべきではないだろうか。

 また、同じ敗戦国でもドイツは今やヨーロッパ連合の盟主としてアメリカと対等に渡り合っているし、これまですべてアメリカに追随してきた感のあるオーストラリアでさえも南支那海での中国封じ込めを断っているようである。

 世界の情勢が変わり、中国が躍進し、アメリカの力に陰りが見られる今日、いかにこれまでの従属関係があるにせよ、ただいつまでも同じ関係を続けるのではなく、もう少し新しい情勢に合わせてアメリカとの良好な関係を続けながらも、近隣国との関係を改善し自国の将来の利益も考慮して、主張するべきは主張し、断るべきところは断って、独立国家として振舞えないものだろうか。

 このままで行くと、下手をすれば、この国の行く末は中国や韓国とも上手くいかず、アメリカにも見放され、世界の中で孤立する道を歩むことになりはしないかと恐れるのは考え過ぎであろうか。韓国にも学ぶべきではなかろうか。