作られた危機

 今度の集団自衛権行使容認のための安保関連法案の強行裁決はもとを正せば、アメリカが自国の軍隊の代わりに従属国の軍隊などをもっと利用してより効率良く世界戦略を進めようとする政策に乗せられているだけのものである。

 実際に日本が今軍隊を増強して世界で戦える軍隊を作らなければならない必然性があるのかどうか冷静に考えて見る必要があるのではなかろうか。これまでの平和国家を変換することで将来どれだけの損失を蒙ることになるのかも考えるべきであろう。

 集団的自衛権の話を聞いていると今にでも何処かの国が攻めてくるので守る準備をしなければというが、本当にそんな危険が差し迫っているのか甚だ疑わしい。

 北朝鮮が今すぐ自らの危険を冒してまで一か八かで攻めてくる恐れは皆無だし、ホルムズ海峡はイランと6ヶ国交渉の妥結で危険性は消失したといってもよいだろう。尖閣の問題は日本がわざわざ作り出した問題だし、仮に万が一占領されたとしても国民生活や国の命運を賭けるほどに影響するようなものではない。況してや南シナ海の問題など実際に日本がすぐに重大な影響を受けるとして騒ぎ立てるようなことではない。

 アメリカで安倍首相が夏までに法案を通す勝手な約束をしてきたので、何が何でも法律を成立させねばと焦り、そのために一生懸命にわざわざいろいろな危機を演出してきているのである。

 もし本当に危機が迫っているなら軍備より先に外交にもっと本腰を入れて注力すべきである。戦争は外交の成れの果てである。外交なしの軍備増強はお互いの軍備増強競争を起こすだけで、かえって危険性を増し、間違えば本当の戦争にも結びつく恐れがある。

 それにもし実際に戦争が起こったとすればばこの島国はどうなるかも考えて見てはどうだろう。水素爆弾が使われたらこの国は数発で全滅である。そうでなくても原子力発電所はいずれも海岸沿いにあって固定されており、場所もはっっきりしている。潜水艦からのミサイルで一番の攻撃目標になるであろう。そうなれば、この狭い国では破壊された原子炉からの放射性物質の拡散でたちまち国中が暴露されて住めなくなることは福島の例からもわかる。

 どう考えても、この国の安全を守るには軍備よりも外交交渉がすべてであることがわかるであろう。韓国や中国との外交交渉が途絶えることなく、もっと活発にしてお互いの理解と信頼関係を深め、共存共栄の道を探るべきで、それこそが最も重要なな安全保障となるのである。

 現在危機として挙げられているものは皆作られたものである。安倍政権がアメリカとの約束を守るためにあえて危機を作り出し、それを梃子に憲法違反の集団的自衛権行使を容認させようとする芝居であることに気付くべきである。