映画「アンブロークン」の日本公開

 新聞によれば、人気俳優アンジェリーナ・ジョリー監督の映画「アンブロークン」はすでに50ヶ国以上で公開されているのに、日本が舞台の映画にもかかわらず、日本での公開が危ぶまれているそうである。

 旧日本軍の捕虜虐待を描いた内容にネットなどで「反日映画」とボイコット運動が起きているからだそうである。ジョリー監督宛てに一万人からの上映反対の声があがり、捕虜虐待の出演者にも「売国奴」などと中傷が繰り返され、配給会社にも公開するなと電話があったそうである。

 内容が分からないので何とも言えないが、同じように日本軍の捕虜虐待を扱った映画「戦場にかける橋」(57年)や「戦場のメリークリスマス」(83年)の時は公開が問題にならなかったことと比べると、見もせずに公開に反対する人が多くなったことは日本社会のの変化を示しており、次第に世界から孤立していくこの国の危険な兆候と見るべきであろう。

 ジョリーさんは「反日映画ではなく許しの物語だ。映画を見てもらえばわかる」と言っているそうである。見もせずに攻撃する人たちは、単に不都合な真実から目を背けたいだけではなかろうか。中国、韓国を含め多くの国で公開されている映画で、米国の元五輪選手ルイス・ザンペリーニ氏が日本の捕虜収容所で執拗な虐待を受け、復讐心に苦しむが、一人の人間としての「赦し」の心の境地に至るまでの過程や生命の強さ、尊さを描いているもののようである。

 戦争中日本の捕虜に対する虐待などがあったことは事実であり、それにまともに目を向けることも必要であるが、それよりその苛酷な状況を乗り越えて赦しの境地に達するまでの過程がいかに描かれているか、捕虜虐待描写にこだわることなく鑑賞することは決して悪いことではないと思われる。

 まずは実際に見てから判断するべきではなかろうか。