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大三島の小さな三つの美術館

 先日暖かくなったので福山からバスに乗って大三島へ行き、大山祇神社から島の南まで足を伸ばして小さな三つの美術館を巡ってきた。

 本州と四国を結ぶ島なみ海道の大三島は昔は瀬戸内の交通の要衝で、そこにある大山祇神社は山の神、海の神、戦いの神として名高く、源平の武将や朝廷が刀や鎧冑など武具を奉納して武運長久を祈ったと言われ、今も神社の国宝館などにそれらの多くが残されている。

 しかし、近年の人口減少や地方の疲弊、舟運の衰退も手伝って、今や島をかすめて通る高速道路で島を通過する人はあっても島へ降りて大山祇神社へ参拝する人は少なく、神社の入り口である宮浦港にも、参道の商店街にも殆ど人影がない。

 大三島も今や島なみ海道の単なる一通過地点になってしまったのであろうか。ただそれに抵抗するかのように近年になってこの島に美術館がいくつか造られたのが頼もしい。

 自治体の合併でこの島は今は今治市になっており、四国にも玉川近代美術館や河野美術館を持っている今治市が力を入れているのかも知れないが、大山祇神社の近くに大三島美術館があり、ここには田淵俊夫を中心とした近年の日本画が千点も収集されているそうである。

 そしてその分館という形で島の南の宗方の近くに小さな美術館が三つある。ところミュージアム、伊藤豊男建築美術館、岩田健母と子の美術館がそれである。

 この三つの美術館が始まったのはまだ今世紀になってからのことで、実業家の所敦夫が自分のコレクションを展示するために景観に惚れ込んだこの場所に美術館を造ったのが始まりで、奥さんが維持に当たる予定だったのが亡くなられて今治市に寄贈された由で、さらに所氏が交流のある伊東豊雄氏に頼んで後の二つの美術館が出来たのだそうである。

 ところミュージアムは入り口が島の尾根の近くを走る道路に面し、そこから急な勾配で海まで落ちる島の斜面にへばりつくように建てられた建物で、階段状に斜面を下りながら展示物を鑑賞するように作られており、一番下は海を望む高いオープンテラスになっていて、瀬戸内の海や島を眺めながらコーヒーを飲めるようになっている。

 約30点の中小の彫刻作品が展示されており、モダンな建物とも良く調和しているし、テラスからの眺めも素晴らしい。おまけにテラスから見えるはるか下の離れた場所に原色のオブジェが一点あり、それが広い緑の森の中から一つだけ顔を出しているのが憎らしい。

 小さいがなかなか気の利いた美術館だなと思って外へ出、少し道路を下るとすぐ伊東豊男建築美術館の変わった建物が見えて来る。ここも小さいが景色も良く、いずれもユニークな黒い建物と白い建物からなり、黒い方は建築関係の資料などが展示され、白い方はワークショップなどが出来るようになっている。

 この二つの美術館は隣り合わせのような感じの所にあるが、もう一つの母と子の美術館は同じ宗方といってもそこから2キロ位離れており、山から海岸まで道を下り、町を通り越した町外れにある。

 廃校になった昔の小学校の木造の校舎を「憩いの家」として宿泊施設に利用し、元の運動場に3米ぐらいの高さの白壁で直径30〜40米ぐらいのサークルを作り、その中が美術館になっており、岩田健氏の母と子の彫刻だけが大小合わせて40〜50点も並んでいる。どれも素敵な作品ばかりだが、初め女性の作品かと思ったぐらいに母と子の微妙な動きのある肢体が何とも言えず見れば見るほど感動させられる。

 この宗方の町は大三島でも南の端で宮浦からでも5〜6キロはあり、交通の便も良くないが、それでもこの小さな三つの美術館は魅力的で、外の景色も良いし、大三島に来たら是非足を伸ばして一度は来てみる値打ちのある所だと思った。

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